相席居酒屋

朝焼 雅

焼き鳥

 週末、焼き鳥屋へ1人で食べに来た。美味しそうな匂いに釣られ、店に入り注文をする。かわ、もも、つくね、ねぎま、レバー、一通り注文して食べていたら、目の前の席に女性が座って話しかけてきた。

「初めまして、どうぞよろしくお願いします」

 丁寧に挨拶されて思わず、「は、はい」 と返事してしまった。けれど、状況が読めず、なんで他の席空いてるのにそこに座るんですかって聞いたら、

「ここ、相席居酒屋ですよ」 って言われて辺りを見渡すと確かに男女で話しながら食事をしている人ばかりだった。

「すみません、ぼくは普通に焼き鳥食べたくて入っただけでこうなるとは思いませんでした」 

遠回しに別の席へ移動したらと言ったつもりだったんだけど、「いえ、私も焼き鳥食べに来ただけなので」 って言うから、「え?じゃあなんでここの店に入って僕の前に座ったんですか」

「ここ、女性だと料金安いし、焼き鳥美味しいから、けど相席しないと安くならないんです」

 こんな感じで、質問してると、

「もう!質問ばかりですね!私も食べたい!」

 怒らせてしまったようだ。僕は黙って焼き鳥を食べる。

「かわ10本、もも5本、つくね5本でお願いします」 結構大食いなんだなぁってボソッと言ってしまったんだけど、「そうなんです!私、いっぱい食べる子なんです!」って笑顔で言われて、その笑顔が可愛いくて照れてしまった。

「僕はよく食べますが、焼き鳥お好きなんですか?」

「好きです!初めて焼き鳥を食べた時あまりにも美味しくて感動して好きになっちゃいました!」

「わかります、僕の実家は貧乏で、お正月に初めて食べた時に感動して、今じゃお酒のお供になってます」

話も弾んでいると、閉店時間が迫っていたから、

「そろそろ閉店ですね、もう少し食べたかった」

って言うと、「もしよければ、今度別の焼き鳥屋へ一緒に行きませんか?」って彼女に誘われて、付き合ってる人もいないし美味い焼き鳥食えるからいいや、そう思ったのでOKして連絡先を交換し、帰宅した。




 彼女と何回か食事しにいき、本気で彼女のことが好きになってしまったので、勇気を出して告白すると返事はOKだった。その理由が、「初めて会った時めっちゃタイプで一目惚れしちゃったから」って顔を赤くし言っていた。


 それから3年が経ち、今では僕の奥さんとして一緒に焼き鳥を食べに行く。

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相席居酒屋 朝焼 雅 @asayake-masa

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