第24話
あれから、とりあえずの義足が出来上がった。
まだ微調整は必要で、アスランの露店にファラエスと一緒に出かける毎日を過ごしている。
懸念していた義足の具合は、早くも良いように馴染んできていた。
空いた時間は朝から晩まで、付きっ切りで踊りの練習を重ねた。ファラエスは予想以上に物覚えが良く、あたしの細かい指南にもすぐに順応する。
その他の歌唱班も、私の元団員を講師として招いて特訓してもらった。その甲斐あってか、みるみる上達していった。
そして迎えた祭典の日。
天気予報によると、黄砂のない恵まれた一日になるらしい。それを裏付けるかのように、昼下がりの空は久しぶりに青く澄んでいた。
一歩外に出ると、活気に湧いた人々の声が聞こえてくる。
祭典の本番は夕暮れからだというのに、どこかのアホが安い打ち上げ花火を上げたらしい、かしこから歓声がわく。
子供たちを引き連れて、一等地の広場にまでやってきた。演目までもう間も無くだ。
祭典の前座として組み込まれたステージは、認知度はかなり低い。周囲に人は多くいるが、演者とゆかりのある観客しか関心を示してくれない。
一日で据えられたような寂しいステージ台と、物見ように並べられたパイプ椅子の行列。そこに、場違いな貴婦人や紳士が腰をおろしていく。
腰掛けている観客は二十五人いて、内半数が孤児養護施設に寄付をくれる慈善家だろう。身なりが上品で分かりやすかった。
ステージ裏ではやる子供達の緊張感も、自然と高まっているようだった。
「続きましての演目は、『民謡と踊りのコラボレーション』と題しまして、孤児擁護施設の子供達による演技となります!」
司会が盛り上げてくれている内に、袖口から子供達がぞろぞろと表舞台に駆けて行く。
ユルケはもう見守ることしかできない。
「頑張れ……みんな」
ラジオカセットから大音量の曲が流れ、子供達が歌い出す。ファラエスは故郷を懐かしむ穏やかな調べに合わせて、中央に立って静かな舞いを披露する。
黒のシルクハットはファラエスに似合ってないが、逆に、大人になろうと格好だけ背伸びしているようで、子供特有の可愛らしさがある。
数百年前にこの街が遠い外国と交わった際、異国人が黄砂から頭皮を守ろうと好んで被っていたのがこの帽子だ。
子供達の合唱も、その時の様子を歌う内容となっている。
ファラエスの着る黒の燕尾服と白シャツは、身体のほとんどを覆っている。足元は服装に合わせた黒光する革靴を履かせた。ズボンと靴とで、上手いこと義足を隠せている。
観客の一部がファラエスの舞いを見て驚くのは、脚のことを知っていたからだろう。
片脚でなぜ普通に舞えているのかと、ふふっ、戸惑っているな。義足を思わせない滑らかな動きが、余計に観客の興味を引いている。
民謡が終わる。
ファラエスの舞いは完璧だった。
「さあ、見せつけやりなさい」
舞台裏のユルケの呟きに応じるように、アップテンポな曲に変わる。最近若者の間で流行っている音楽だ。最年長の男の子の案によるものだ。
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現在の更新分はここまでとなっております。
※次回更新不定期です。
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