第13話

「ねぇアスラン、物のついでで相談させて欲しいんだけど……踊りで人を魅了することしかしてこなかった私でも、お金を稼げそうな働き口を知ってたりしないかしら?」


 アスランは黒い短髪を傾けてう~んと悩み、それでしたらと、思わぬ仕事を紹介した。


「実は僕、呼び込みをしてくれる人がいたら良いなと、思っていたところなんです」

「呼び込みって言うと、この店の宣伝みたいなものかしら?」


「はい。交通量の多い所から、新規のお客様をここへ連れてきていただきたいんです。給金は歩合制になります。勧めといて難ですが、お客様ならもっと良い働き口がいくらでも見つかるかと思います」



 自慢ではないが、男を引っ掛けるのは得意だ。特に呑んだくれや歳のいったオジサンは、簡単に思考を誘導できるから扱いやすい。

 歩合制ということは、引っ掛ければ引っ掛けるほど金になるということ。慣れない仕事をするよりも、自分らしく沢山稼げるのではないか。


 そしてなにより、アスランの手腕はもっと多くの人が知るべきだと思う。その一助になれるのなら、遣り甲斐もある。


 ……アスランにもまた会えるし。


 これほどの好条件、他にないのではないか。


「私、やりたいわその仕事! 私にやらせてちょうだい! 本業は踊りでやっていきたいから、働く日時は不定期になると思うんだけど、良いかしら?」


「僕に一言頂けなくとも、お客様を連れてきて頂ければ給金に加算させて頂きます。ちなみに、僕の営業日は週四日で曜日は……いえ、これも良い機会ですね、平日の週五日やっています」


 どうして週五日に言い直したのかは分からなかったが、稼げる日数が増えたのはありがたかった。


「それじゃあアスラン、これからもよろしくね」


「こちらこそよろしくお願いします。お客様、と呼ぶのももう変なので、お名前を教えてもらってもいいですか?」


「フフッ。失礼、言いそびれてたわね」


 シルクの自己紹介の文言は、旅団に入った時から決まっている。



「私はシルク。踊り子のシルクよ」


 アスランと固い握手を結ぶ。



 昨晩は悲嘆に暮れたシルクだったが、見通しの暗かった将来に暖かな光が生まれてくるのを感じていた。

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