焼き鳥と野良

イノナかノかワズ

野良と焼き鳥

 はぁ、今日も疲れた。

 夜の喧噪が響く中、俺は重い足を無理にでも動かして自宅へと歩きを進めていた。

 

 進めていたのだが、しかしながら夕飯どうするか。スーパーに寄るか? でもここ最近総菜ばかりでな……

 自炊するのも面倒だし、いや、してもいいんだが疲れているからな。やりたくないのが実情。

 外食でも……月末だからそんな余裕はないし……けど、総菜なんていう味気ないのもな……


 はぁ。堂々巡りする。

 どうしよ、面倒だ、喰わなくてもいいか? だが、喰わなきゃだめだし……


 はぁ。


 そうあっちへふらふらこっちへふらふらと考え込みながら歩いていたら、いい匂いが漂ってきた。

 それと同時にぐ~とお腹が鳴る。ジュルリと涎がでる。

 やばいやばい。腹がめっちゃ減る。疲れとだるさで消え失せていた食欲が一気にわいてくる。


 ああ、そうか。いつの間にか違う道を歩いていたんだ。

 だからいつもは嗅ぐことのない匂いが、焼肉屋さんから漂ういい匂いが聞こえるんだ。


 けど、けど、焼肉なんて俺は食えない。金がない。

 くそ! こんなにも俺は肉を食べたいのに。

 ああ、マジでどうすれば。


 俺はイライラする腹を抑えて元来た道へと戻ろうとしたのだが。


「あ!」


 思わず声を出してしまった。

 見つけてしまった。焼肉よりも安く肉が美味しい肉が食えるのが!

 俺はためらうことなく、そこに焼き鳥屋さんに突撃した。


「あのすみません。ネギのタレと――」


 買ってしまった。衝動買いしてしまった。

 明日の夕飯どうすればいいのだろうか。ホント、財布が寂しいっていうのに。


 まぁけど、やってしまったし、しょうがない。

 今日は酒はないけど、よしこれを味わって食べよう。


 ……家で食べるか?

 せっかくなけなしの金でかった焼き鳥だしな……

 それに美味しいのだろうだろうし。


 お、公園……梅か。まだ桜は咲いてないけど、梅は咲いてるからな。

 よし、今日はうめを肴に焼き鳥を食べるか。

 うん。


 ベンチ、ベンチ。よし、いいところにあった。

 座ろ。


 さて、何から食べようか。

 ネギ? 皮? 塩? タレ? ツクネもいいし、レバーか。


 ……迷うな。けど冷めないうちに……


 そう思ってまずはネギの塩に手を付けたのだが……


「にゃー」


 黒猫がいた。首輪はなく、ところどころ泥があるから野良なんだろう。

 けど、奇麗な瞳だ。黄金だった。


「にゃー、にゃー」


 腹がいているのか、俺の手にあるネギを見ながら鳴いてくる。

 ぶっちゃけ、俺は猫に弱いわけでもないし、動物を特段可愛がったりする正確ではないのだが……


「仕方ない。せっかく奮発したんだ。楽しみは共有した方がいい」


 俺は手に持っていたネギを素早く食べると、その串を使ってほかの皮やレバー等々を一個ずつ外していく。

 どれが口に合うかわからないため、一種類づつ試していく。


「にゃ~!」


 そうか、そうか、それがいいか。ぶっちゃけ、名前見てなかったけど店主におまけでもらった何かなんだが……

 じゃあ、それをすべてやる。


「にゃ~」


 黒猫が肉を食いちぎりながら、梅の方を見た。俺の方ではない。

 だが、不快ではなかった。


「お、お前も梅を見に来たのか。じゃあ、一緒に見るか」

「にゃ~」


 そうして、俺たちは一緒に梅を見ながら焼き鳥を食べた。

 大層美味かった。





======================================

 読んでくださりありがとうございます!

 少しでも情景を思い浮かべたり、面白いなぁと思いましたら、フォローや応援、★をお願いします!

 特に★は一つでもくださると大変励みになり、モチベーションアップや投稿継続等々につながります。よろしくお願いします!


 また、私の別作品を読んでくださるとさらに嬉しいです!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

焼き鳥と野良 イノナかノかワズ @1833453

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説