焼き鳥が登場する物語

Azu Kian

第0話「歓迎会の料理」

 命の恩人おんじんである二人の司令しれいが話し合っているのだが、われの知らない単語が多くて話をめに入りづらい。


「お祝いと言えば七面鳥じゃない?僕は本物を見た事ないんだけどお約束は押さえたいよね」

「それはクリスマスでしょ!だいたい七面鳥なんて手に入るわけないし歓迎会のお料理なのよ?」


「おたくだってローストチキンがいいって言ってなかったけ」

「ビーフよロースト!パーティ料理の定番でしょう?」

「ありゃそうだったのか、ごめん僕の勘違いだったよ」


 われが司令達の艦隊かんたい転籍てんせきになったお祝いに、三人で食事をしようという話だったのだが無事おさまって安心した。

 結局のところ、おすすめパーティーセットを注文するともなく届いた。昔と比べて今の食料事情は良いようだ。



「どれも初めて見ます。これが料理なのですね、色や形が違う所が興味深いです」

「料理を見たことが無いって、今まで何を食べてたのかしら」


 我の教化きょうか項目に料理はない。料理という単語として記録されているだけで詳細な情報などもない。


「取り扱い説明がありましたので宇宙うちゅう戦時せんじしょく摂取せっしゅしていました」

「それって透明な消しゴムみたいなアレかい?」


 ケシゴムの意味は分らないが戦時食に良い印象を持っていないようだ。信条しんじょうに関わりなく誰でも栄養をれるよう開発された無味無臭の完全食品のはずなのだが。


「おめもした方がいいかしら、お赤飯と尾頭おかしら付きとか他にも・・・」

「もう何でもやろうじゃないか、そうだよ誕生祝いもしないとなケーキの注文だ、あとはローソクも用意しないと」



 何が起こったのか、二人はまたも料理を注文していった。そして張り切っている二人に勧められるまま、さまざまな味のする料理を色々と食べることになった。


 立てた棒に火をつけて吹き消す儀式ぎしきをした後、平たい円筒形を切り分けて三人で食べた。ずいぶんと甘いものだった。


 いつの間にか随分と贅沢ぜいたくが出来る時代になったものだと驚いたし、見知らぬ生活にも不安を感じていた。

 しかし、二人の顔を見ていると美味しい食事という言葉の意味を理解できる様になるのもいかもしれないと思えた。

 この宇宙艦隊が私の職場になった日の出来事だった。




 ☆

 ☆☆

 ☆☆☆


 本作主人公の名前や上司である二人もでてきます。

 関連作「ようこそ我が艦隊へ!新入生の皆さん宇宙実習の時間ですよ」

 https://kakuyomu.jp/works/16817139555262222732

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焼き鳥が登場する物語 Azu Kian @sencyo

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