いつも通りの生活では見つけられない場所

くすのきさくら

帰り道での新たな発見

23時40分。平日なら最終電車に余裕で間に合う時間だ。


だが……今日は祝日だった。大学が祝日なのに、普通に講義があるから勘違いするんだよ。であるが――まあ過ぎてしまったことはしょうがない。などと思いつつ俺は駅で一人ポツンと時計を見つつ立っていた。


現在俺は大学の帰り――というか。大学に行った後、友人たちと遊んだその帰りだ。

先ほども言ったが今日は祝日。でも大学は講義日だったこともあり。俺は朝から大学へと行っていた。それも――たった1限の講義を受けるためにだ。俺真面目だろ?サボる奴ならサボるよ。ってやつかもしれないが――俺は真面目に行ったよである。誰か褒めてくれだな。まあ誰も褒めてくれないだろうがな。

そして大学で会った仲間と「午後は何もないし。どこか行くか」ということになり。

遊んで飯食って、食後の運動やらで――駅前のお店でダーツをして遊んで、先ほど仲間と別れたところだ。俺だけね。みんなと変える方向が違うんだよ。


そしてトラブルというか。ミスが起こったのだった。

今日は大学へ行ったので――俺は朝こそ今日は休日ダイヤ。と覚えていたのだが――遊んでいたらすっかり忘れていたという。

駅へと来た俺。なんか人が少ないな――と思っていたら。


「……ミスったー」


だった。駅の改札のところには次の発車案内が無かった。

無かったということは――本日の営業。運転は終了しました。と、いうやつである。


この駅では、平日の最終電車は23時45分発だ。

だが――休日の場合は23時35分発となる。つまり5分ほど前に最終電車は発車している。次の電車は朝だ。


もちろん朝まで待っているというようなことはしない。

数駅なので歩いたら――1時間くらいで帰れるのでね。俺は諦めて家の方向へと歩き出していた。


もうすぐ日付が変わるがこの駅は大きな方の駅なのでそこそこまだ人通りがある。他の路線。鉄道会社はまだ走っていると思うしな。現に電車の走る音がするし。俺が乗るところだけが――なんだよな。10分の違いは――大きい。ダーツの後少し話して――というのが無ければ乗れた可能性はあるが――まあその時の俺は完全に平日ダイヤの頭だったんでね。仕方ない。


そんなこんなで俺が1人トコトコ歩いていると――次第に人通りは少なくなっていった。


普段は電車はビュンと通過する区間。車窓なので、何があるかなどは全く知らなかったのだが――。


「へー、こんな所にカフェとか雑貨店あったのか」


さすがにこの時間ではどの店も閉まっているが何カ所かお店があった。昔ながらというか。古い感じの店もあったりした。

また突然大きな家があったり――あれは誰か社長とかでも住んでいるのだろうか?みたいなことを思いつつ――なんか足早に通過したのだった。


駅から離れると――何もないかと思っていたが。結構いろいろとあった。突然道が明るいと思ったら、コンビニもあったしな。何年か住んでいるのだが。歩いたことが無かったので、こんなところにもお店あったのか。という事ばかりだった。


でもさすがにさらに歩いていくと――お店は減って行き、ちょっと畑が見えて来たり――と暗い夜道が続いた。

まあ俺が住んでいるところは周り畑というか。建物は少なめ。というところなのでね。畑などが見えてきてくれないと家にたどり着かないので――まあ家に近づいているということだ。


そんなこんなで俺は1人でのんびりと歩いていると――どうだろうか。家まで半分くらい歩いただろうか。ちょっと線路からは離れたところを歩いているので、途中道大丈夫か?と思うこともあったが。いや、マジで歩くの初めてだからな。うん。でも多分あっているという感じで進んでいると――。


「—―電気付いてるよ」


前方にポツンと、提灯に明かりがついているところがあった。


少し前にコンビニを見てからお店はなかったのだが――突然お店登場というか。こんな何もない畑の真ん中というか。うん。ポツンとお店が現れた。それも今営業中という感じだった。


時刻は既に00時30分くらい。まあ開いているところはまだ開いているかと思うが――こんな交通機関とか無いもないところ。ぱっと見住宅地からも離れているところで――と俺が思っているとお店の前へとやって来た。


ちょっとどんな店か気になったので、たまたまドアが開いていたこともありチラッと中を見て見ると――小さな店で、店内は2、3席。カウンターのみという感じだった。


「……居酒屋?」


俺がそんなことをつぶやきつつ通過しようとしたら――店の裏。横からだった。


「おっ、お兄ちゃん。今帰りかい?どうだい。ちょっとつまんでいかないか?」

「—―えっ?」


鉢巻を巻いた……なんて言うのかオーラが明るいというか。ニコニコがすごいというか。うん。明るい年配の男性がいきなり俺に声をかけてきたのだった。

ゴミ箱?を持っていたので店内の掃除中?などと思いつつ俺が突然の事でフリーズしていると。


「ってか。今日は暇でよ。ちょっと時間あるなら俺の相手してくれないか?」

「えっ?」

「ほらほら。サービスするから」

「—―えっ?うん!?」


数分後。


「……いい香り。そして――美味い。えっ?なんか俺の知っているねぎまと全然違うというか――美味い」

「だろだろ。俺が焼くと何でも美味くなるんだよ。ってか。おにいちゃんや。こういう店は初めてか?」

「あー、ですね。大きな居酒屋なら行ったことありますけど――こういうお店は――まあ入りにくいというか」


現在の俺は、明るい年配のおっちゃんに絡まれて――そのままお店に押し込まれた。まあ背中を押されたというか。店内に入ってしまっただった。

のだが――何故か店内に入ると……落ち着くというか。すごく居心地はいい感じのお店で、明るい年配のおっちゃんは「サービスサービス」と言いつつ。すぐ俺に数本の焼き鳥。ももとねぎまを出してきたのだった。


うん。強制的に来たか。金を払わせる気か。と思ったのだが――カウンターにあったメニュー。手書きの物だったのだが――焼き鳥全品60円。と書かれていた。マジかーだった。なので、まあこのくらいならということで――歩いて来てちょっと小腹……と思っていた俺は普通におっちゃんが焼いてくれた焼き鳥を食べていた。そして美味さに驚いていたのだった。


「美味かったら今度はお友達でも連れてきてくれよ。ちなみにここ22時からその日の気分だから」

「なんかすごい営業時間……」

「あと適当に休む。もしお友達連れてきて食えるなら前日にメッセージ欲しいな。メニューのところに名刺みたいなんあるだろ?俺の手作りだ」

「……意外と――ハイテク?」

「そこに――何日の何時くらいに!ってな。あー、でもこの店3席しかないからな4人目からは外でパイプ椅子だ」

「—―なるほど」


うん。この明るい年配のおっちゃん。なかなかやるというか。名刺サイズのカードを見て見ると。普通にメッセージアプリのIDが書かれていた。なんか高齢の人というか。年配の人はあまりメッセージアプリとか使ってないのかと思ったが――その考えは古いらしい。俺はとりあえず1枚もらって――としていると。


「次何食べたいよ。おすすめはつくねだな」

「あー、いいですね。じゃあつくねと――レバーありますか?」

「あるある。ちょっと待っててくれ。そういえばお兄ちゃんはなんでこんな時間に歩いてたんだい?」

「それだと、なんでこんな場所でお見せしているのですか?も聞きたくなるんですが――まあ電車に乗り遅れてのんびり歩いていたところです」

「あー、なるほどなるほど。そりゃ大変だ。家は近いのかい?」

「まあちょうど家まで半分ちょい。ってところですね」

「じゃ、残り半分の体力回復に。サービスでしいたけとシシトウだ」


おっちゃんはそう言いながら小皿を俺の前に置いた。ってめっちゃ美味そうだった。うん。しいたけもししとうもいい焦げ目といい香りだった。

味はもちろん――うん。最高だった。

その後は大葉?だろうか?多分大葉とかが入っていたのか。さっぱりしたつくねに、いい味のレバーと――うん。このお店めっちゃ良いというか。おっちゃんがいい雰囲気を作ってくれているし。おっちゃんが焼くのめっちゃ上手いというね。


それから俺はしばらくおっちゃんと雑談しつつ。お店に貢献していたのだった。


最終的には7本俺は焼き鳥を食べていたので――普通に計算したら420円。なので――俺は1000円を出したのだが――。


「いいよいいよ。無理に来てもらったんだから。その代わりまた来てくれよ」

「えっと――えっ?」


頑なにお金を受け取らないおっちゃんだった。


「いいからいいから」


結局俺はまた来る。ということで――本当にタダで美味しい焼き鳥。おつまみと飲み物を飲んで――幸せな気分で家へと帰ったのだった。


電車に乗り遅れて、歩いて帰ってきたのにまさかこんな気分で家に到着するとはだった。たまには歩くことでいい発見あるな。と思いつつ――その日はとってもいい気分で休むことが出来たのだった。


――――。


後日、俺は約束通り大学の仲間をお店へと連れて行った。ちゃんと事前にメッセージに連絡してな。そしたら普通にOK!というスタンプが帰ってきたな。うん。普通にメッセージ画面での予約。という感じだった。

ってか、あれだな。明るい年配のおっちゃん。商売上手というか。一人のお客を無理に捕まえて、焼き鳥の美味しさアピールをしたら。客が増えたというか。うん。

連れてきたみんなも美味いって言っていたしな。おっちゃんも喜んでいたし。まあちょっと徒歩移動がクレームだったがな。うん。それは仕方ないだ。

そしてその後も俺はこのお店にチマチマと通い続けるのだが――それはまた別の話だ。



(おわり)

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