【KAC2022】 目指せ、88歳!

東苑

女子高生がする会話ではない、女子高生の会話



 とある女子高校の教室にて。

 お昼休み。

 ご飯を食べ終わり、わたしはクラスメイトの育美いくみあやちゃんと時間になるまで雑談していた。

 ここまでの話題は「プロ野球のドラフト戦略」や「転生できたら何になりたいか」、「今年の東京優駿、有力馬」、「今週のジャン●」についてだ。


「そうだ、聞いて! うちのおばあちゃん、明日誕生日なんだ! 88歳!」


 わたしがそう切り出すとクラスメイトであり幼馴染みでもある育美が反応する。

 中学の部活を引退してから伸ばし始めた黒髪ロングが今日もとっても綺麗だ。


「私のおばあちゃんも来月誕生日だ。88歳」


「え、すごい!? 麗ちゃんと育美ちゃんのおばあちゃん、同い年なんですね」


 と、こちらは高校からの友達であるあやちゃんが続く。

 さっきまでジャン●の話をしてたからメガネ(伊達)を装備したままだ。

 メガネ(伊達)をかけるとリッミターが解除されてオタク話を全力でできるらしい。


「うん、うちと育美の家のおばあちゃん、小さい頃から友達なの」


「え!? 二人は幼馴染みだって前に言ってましたけど、それっておばあちゃんたちの代から親交があったってことですか?」


「おばあちゃんのお母さんたちの代から仲良かったらしいよ。ね、育美」


「うん、前に私とうららのひいおばあちゃんたちが映ってる写真見せてもらったことあるよ」


「すごすぎて言葉が出てこない……」


「まあ、そういう反応になるのも無理ないわ」


「だから小さいときから、それこそ生まれたときからずーっと育美と一緒なんだ」


「さすがに生まれたときは言いすぎでしょ」


「でも幼稚園入る前から遊んでたじゃん! 育美は小さいときから犬とか猫とか虫とか人間以外の生き物が苦手でね~」


「言い方。それにそんなに珍しいことでもないでしょ、人間以外の生き物が苦手って」


「自分で言っちゃってるじゃん」


「なんだか漫画とかアニメみたいな せって――じゃなくて、お話ですね」


あや、今“設定”って言いそうになったでしょ?」


「いやあのそのごめんなさい~!」


「ううん、ちょっとからかっただけ、ごめんね」


「でもほんとに漫画みたいな話だよね~」


「まあ珍しいだろうけど、探せばそれなりにいるんじゃない?」


「育美ちゃんクール! なんだか運命みたいですね。まさにその血の定め……ジョジ●ですな!」


「じゃあわたしたちもおばあちゃんになるまで仲良くしようね! 目指せ88歳!」


「も、もう……」


 少し照れくさそうに育美は目を逸らす。


「恥ずかしいこと平気で言うんだから」


うららちゃんは素直でいい子ですから」


 あやちゃんはおさげで髭をつくってみせる。


「ふぉっ、ふぉっ、ふぉ~、そんないい子には文おばあちゃんが飴ちゃんをあげるよ~」


「わ~い! ありがとう!」


 育美は呆れたようにわたしと文ちゃんのやり取りを見てる。

 本当は混ざりたいに一票。


「だいたい、私と麗のおばあちゃんお散歩したり土いじりしたりしてまだまだ元気だから、あと何年かは余裕で更新されると思うよ?」


「じゃあその分長生きしましょう、ねぇ、育美おばあちゃんや」


「誰がおばあちゃんよ!」


「文ちゃんも!」


「ありがと~! 永遠にオタクでいるつもりなので一緒にアニメとか観ましょう! でも私の家、短命の家系なんですよね。最高でもおばあちゃんの84歳」


「じゃあ記録更新もかかってるんだね。最近は医療が進歩してるしイケるよ!」


「はい! 一年でも長く、一作品でも多くをモットーに頑張ります!」


「なにこの会話……」


「もしおばあちゃんになれたらみんなで同じ老人ホーム入ろうね!」


「だから高校生のする会話じゃないって!」


「あはははは!」


 おばあちゃんの話で爆笑する、わたしたちであった。



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