2015年3月2週②

「改めてだけど、やっぱ綺麗だね。」

「うん!めっちゃキレイ!」

「…………。ぷはっ!下見てみ?」

「ん。…………。…………。んぱっ!んばあ。何があるの?」

「え、気づかなかった?めっちゃ魚泳いでるよ?」

「うそ!」

「あのー、ちょっと先のおっきい岩あるじゃん?」

「うん。」

「その周りをぐるぐるしてるよ?」

「…………。…………。っばぁ!ほんとだ!泳いでる!」

「その辺のやつも、どれもこれもサンゴだよね?」

「たぶん?」

「じゃあ熱帯魚だらけなわけだ。」

「ここ来てから一番楽しそうだね。」

「あやちが来たいって言ったのに、なんでわたしよりテンション低いの?」

「ちーちゃんのテンションに押されちゃって。」

「さっきのわたしも大体そんな感じだった。」

「あー、なんとなく今なら分かるかも。」

「でしょ?反省してね?」

「それはむりー!だって楽しいもん!」

「あれ、あそこ何?」

「あー、夜だけ行けるらしいけど。バーだって。」

「え、いいじゃん!行こ!」

「夜だよ?」

「分かってるよ!絶対行こうね!」

「あやち、お酒飲まないよ?」

「え?」

「『え?』じゃなくて。だって、あやちすぐ酔っちゃうし。」

「旅先だよ?旅先の酒は飲まないと一生後悔するよ?」

「そもそもあやちそんなにお酒好きじゃないし。」

「あー!そういうこと言うー!絶対後悔するからね!将来!」

「たぶん、ちーちゃんじゃないから大丈夫だと思うよ?」

「なんかしれっと馬鹿にした?」

「ん-ん!夜が楽しみだね!」




「え、あやち?なんて言ってるの?」

「えーっと、たぶん、『メニューにない特別な奴あげる』​って。」

「それ高くない?」

「分かんないけど……。ハウマッチ?」

「Same around there.」

「なんて?」

「そのあたりのメニューと同じくらいだって。そんな高くないみたい。」

「じゃあ、お願いする?」

「あやちじゃなくて、ちーちゃんだよ?」

「……。お願いする。」

「わかった。……。ゲットレディ。」

「OK. Follow me.」

「いくよ、ちーちゃん。」


「なにこれ?」

「ちょっとよくわかんないけど。……。ワッツ?」

「Make a tower, pour liqueur from above.」

「ん-っと。タワーにグラスを積んで、お酒を流すって。」

「Light fire! Fu~!」

「ウッウッウッウッウッウッウッ」

「なになになに?」

「吸って!」

「何が!」

「ストローで!」

「何を!」

「お酒!」

「火付いてる!」

「そういうもんだって。」

「まじ!」

「早く!」

「もー!」


熱い。

キツイ。

怖い。

なになに。

熱い。

飲み切れない。

周りがうるさすぎる。


「Fu~! That's cool!」

「Waste to be a woman!」

「Water. Calm down.」

「え、ああ、サンキュー。」

「すごかったよ!ちーちゃん!」

「だー!えぐ。火付くくらいのお酒だもん!きついよ!」

「『女にしとくにはもったいないくらい最高の女』だって。」

「それ褒められてるのかな。」

「いいんじゃない?楽しかったし。」

「わたしは怖かったけどね。」

「でもいい思い出じゃん!」

「特別メニューなんだもんね。得したかもね。」

「あとはこれが本当に普通の金額だといいけどね。」

「怖いこと言わないでよ。」




「あの、あやち?何してるの?」

「時間もったいないから。」

「もったいないから?」

「一緒に入っちゃおうかなって。」

「狭いよ?」

「…………。うんしょっと。……。入れたよ?」

「そうだけどさ。」

「エッチなこと期待してる?」

「疲れてるからいらないかな。」

「えー!」

「なんで!」

「せっかくいい雰囲気になって、ワンナイトかと思ったのに。」

「明日も早いんだから、そんなことしてる場合じゃないでしょ!」

「でもー。」

「あやちだってそう思ってるから、時間勿体ないって言ったんでしょ?ちゃっちゃと出て寝るよ?」

「……。もうちょっと。 こうしてたい。」

「…………。もうちょっとだけね。」

「うん。」


…………。

マジで疲れた。

まだ一日目なんだよね。

あと2日あるんだ。

嬉しいけど。

…………。

体もつかな?

…………。

……。

あー、思いだすなー。

ちょうどほぼ一年前かー。

あんな狭いお風呂でも二人で……。

あ。


「ねえ、あやち。ちょっとどいて。」

「なんで?」

「出たいから。」

「じゃあいや!」

「大丈夫、戻ってくるから。」

「…………。」

「嘘つかないから。」

「嘘だったら?」

「あやちのお願いなんでも一個聞いてあげる。」

「何でもだよ?」

「別にいいけど、戻ってくるからこの約束意味ないよ?」

「でもいいの!なんでもだよ?」

「なんでもだから。だから、ちょっとどいて。」

「うん。」


えーっと、コンビニで買ったやつが。

お、イイ感じに冷えてるじゃん。

……。

2本持ってくか。


「ただいまー。」

「えー。」

「は?」

「なんで戻ってきたの?」

「戻ってくるって言ったじゃん。」

「なんでも聞いてもらおうと思ったのに。」

「だから、戻ってくるって言ったじゃん。だから無駄だよって言ったのに。」

「むー。」

「はい、ちょっと開けて。」

「はい。」

「ん?」

「あやちの前。スペースあるじゃん。」

「わたしそっちなの?」

「うん。」

「あー。……。はい。じゃあ。」

「…………。何してたの?」

「え?ああ、これ。」

「また飲むの?」

「でも、初めて飲むお酒だから。」

「『でも』?」

「えーっと。サンミゲルの……。なんだろ。」

「…………。」

「あと、もう一本が。サンミゲルの……。なんか。」

「2つとも分かんないじゃん!」

「いいのいいの。あやちも飲む?」

「じゃあ一口だけ。」

「え、片方あげるよ?」

「そんな飲めないよ?」

「じゃあ仕方ないなー。わたしが2本とも飲むかー。」

「……。わざとだよね?」

「へ?違うよ?いやー、もう蓋開いちゃったし、今夜中に飲まないとね。」

「……。」

「てか、この2本違うやつだよね?」

「書いてないの?」

「確かコンビニで見た時は違う値札が付いてたと思うんだけど。」

「ほとんど色も同じだもんね。」

「飲めばわかるか。」

「発想が女の子じゃないよ?」

「…………。…………。ふんふん。…………。……。はーん。」

「どう?」

「おいしい。」

「そうじゃなくて。」

「あやちも飲んでみれば?」

「……。一口ずつね。」

「分かってるって。どう……。あ、口移ししてほしい?」

「えっ!?」

「しかたないなあ。ちょっと待ってね。…………。ぷはっ。」

「ちーちゃん飲みたいだけじゃん!」

「ごめんって、次はちゃんとあげるから。」

「…………。」

「…………。んっ。んふょ?」

「……。んっ。ん、ごくっ。んっ。……。んんっ。……。んあぁ。おいしい。」

「でしょ!次のやつね。」

「うん。…………。ん。んんっ。んぷちゅ。ちゅっ。……。んっ。……あ、ちょっと違うかも。」

「ほんと?」

「あやち、最初の奴が好きかも。」

「じゃあ残り飲む?」

「んーん。いい。もういらない。」

「そう。」

「…………。」

「…………。」

「なんで?」

「なにが?」

「なんで戻ってきたの?」

「いや、約束したから。」

「でも、いつものちーちゃんなら、約束なんてしないじゃん。」

「ん-。やり残してたからかな。」

「やり残し?」

「そう。だから、ちゃんと後悔は残さないようにしないとなって。」

「えー!全然意味わかんないー!」

「気にしなくていいから。」

「えー!」

「それより、ちゃっちゃとお酒飲んだら、ちゃっちゃと寝るよ?」

「あやちはもう出れるよ?」

「わたしが前にいたら出れないでしょ?」

「どいてよー。」

「飲むまで一緒にいてよ。」

「あやち飲んでないのにー!」

「こういう配置に変えたあやちのせいだね。」

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