2015年1月1週①

「結構人いるねー」

「まあ、めちゃめちゃ有名じゃないけど、結構有名なところだから。」

「わたし初めて聞いたよ?乃木神社なんて。」

「恋愛系の神社みたいだからね。ちーちゃんあんま興味ないもんねー。」

「まあ、そうだけどさ。で、これどこから回るの?」

「ん-、やっぱ本殿が最初じゃない?」

「調べてないの?」

「もー、すぐそうやってあやちに頼るんだから。ちょっと待って。」

「はーい。」


そういえば深夜に初詣に来たのなんて久しぶりかも。

昔は家族で出かけてたなー。

…………。

あれ。


「ねえ、あやち?」

「なあに?」

「火の奴なくない?」

「火のやつ?」

「なんか、入口辺りにさ、キャンプファイヤーみたいにしてるやつ。」

「あー、そういえばないね。」

「やっぱ都会だとやりにくいのかな。人多いし。」

「そうだねー。あれないとちょっと寂しいね。」

「暖まれないしね。」

「そこなんだ……。」

「大事でしょ!寒いもん!」

「はあ。」

「で、分かった?」

「ん-。調べ方が難しいから分かんない。」

「じゃあ、適当に行こっか。」

「うん!」

「今何時?」

「そーね、だいたいね?」

「…………。あやちそれちょっと古くない?」

「えっ、ちがくて!お母さんがサザン好きだから、頭にs「いいから。あー、まだあと15分あるじゃん。」……。うん。」

「あやちってたまに変だよね?」

「……。今の?」

「今の。」

「変かな?」

「変というか。なんだろ。無意識でボケるタイプだから、わざとボケてるの見ると、痛々しいっていうか。」

「えーっ! ひどい! 」

「でもかわいいよ?」

「そこの逆説は使い方あってるの?」

「知らないけど、可愛いんだから良くない?変だけど。」

「むー。……。ありがと。」

「どういたしまして?」

「そこは疑問なんだ?」

「今回は言葉選びが正しいかわかんなかったからね。」

「ふーん。」

「あ!甘酒!」

「でも、お酒じゃないよ?」

「知ってるよ!バカにしてるでしょ!」

「ちょっとだけ。」

「もー!いいもん!あやちにはあげないもん! すいませーん、ひとつくださーい。」

「あー!あやちもー!もう一個ください!」


「あいよー。お嬢ちゃんたち、若いのに甘酒なんて飲むんだね。」

「だって、飲まないとやってられないですもん!」

「お、これは将来有望な呑み助だな。」

「もう呑み助です!」

「ちょっと、ちーちゃん!」

「おっと、そいつは失礼。それとな、来年からは水筒持ってきな?これでもかってくらいに注いでやる。」

「ほんと!おじさんありがとー。」

「おうよ。来年も良い年にしろよ。」

「はーい!」


「ふー。暖かいねー。熱すぎるくらいに。」

「そうだねー。」

「あやちめっちゃグビグビ飲むじゃん!」

「暖かいうちに飲まないと。」

「……。ねえ、ちょっとさ。違くない?」

「…………。やっぱり?」

「地域柄ってあるのかな?もっとショウガが効いてるイメージなんだけど。」

「ん-。そうだよねー。地元で飲んだのとはちょっと違うね。」

「ま、いっか。おいしいし。」

「ちーちゃん、そんなゆっくり飲んでたら冷めちゃうよ?」

「熱くて飲めないの!」

「猫舌なのも、キャラに合わないよね。」

「キャラで猫舌なんてやってないからね。仕方ないよね。」


こういう甘酒とかって、ゆっくりちびちび飲むからいい気がするんだけど。

ほぼジュースなんだけど、ジュースみたいなものと違くてさ。

ん-。

あ!


「ねえ、なんかあんま星見えないね。」

「あー、確かに。地元にいた時はもっと見えてたよね。」

「冬ってもっとさ、こう、空が澄んでて、光が弱くても届いてる感じがして、心まで透き通るみたいな。」

「ちーちゃんって、ロマンチストだね。」

「ロマンチストかな。」

「星のこと語ってるから。」

「薄くない?根拠。」

「ん-、でもたまに思うもん。」

「どんな時?」

「えーっとね。…………。すぐには出てこないけど。」

「出てこんのかい!」

「でもたまにふっと思うときあるよ。」

「ん-。星見るのは好きだけど。でもそれってロマンチストというよりも、物理とか天文学とかそういう話だし。」

「そうかもだけどー。普通の人はふとした時に星なんて見上げないよ?」

「え。」

「あやちも見ないもん。」

「なんてもったいない……。」

「もったいないと思う前に朝になってるから大丈夫。」

「もっともったいない。」

「ん-。あやちがもったいない話はよくて!やっぱりちーちゃんは、ロマンチストなの!」

「ロマンチストって、人から言われると恥ずかしいけど、肩書としては格好つくね。」

「そういう話でもないんだけど……。」


ボーン。

ボーン。


「お、明けたみたいだね。」

「そうだね。」

「あけおめ!」

「うん、おめでとう!」

「今年もよろしくね!」

「今年だけ?」

「とりあえずは今年も。」

「今の内からもっと未来のことも。」

「来年のことは来年のわたしに言ってくださーい。」

「えー、ずるいよー。」

「はい!行くよ!初詣するよ!」

「あ、ちょっと待ってよー!」




「ねえ、手ってどう洗うんだっけ?」

「え、知らないの?」

「いつも適当だったから。調べたことないもん。」

「えーっとね、あやちもテレビの受け売りだけど。水掬って。」

「うん。」

「左手洗って。」

「ふん。」

「持ち替えて右手洗って。」

「ふん。」

「右手にお水溜めて。」

「うんうん。」

「口をすすぐ。」

「おわり?」

「そのはず。」

「よし、ちょっと待ってね。」

「早くしないと、並んじゃうよ?」

「並んでも時間かかんないから。ディズニーじゃないんだから。」

「神社とディスニーを比べるのもどうかと思うけど。」


今まで作法とかどうでもいいと思ってたけど。

まあ全然周りに人いなかったし。

手水のある神社なんて初詣で行ってなかったし。

せっかくだから、ちょっとくらいね。

郷に入ってはってね。


「お待たせ―。」

「はい、タオル。」

「準備が良いね。」

「だって、ちーちゃん持ってないじゃん。濡れたまんまだと風邪ひいちゃうから。」

「なんて優しい彼女なんだ。」

「恥ずかしいから、大きい声で言わないでよ。」

「恥ずかしいの?」

「……。言葉の綾だけど。」

「じゃあ大きい声で言ってもいいんだ。」

「それは純粋に目立って恥ずかしいからやめて!」

「やらないよー。冗談だって。わたしだって恥ずかしいんだから。」

「…………。よかった。」

「……。わたしのことなんだと思ってるの?」

「あやちをおもちゃにする人。」

「あながち間違いじゃないなー。」

「あー、ひどいー。否定してよ!」

「でもあやちはわたしにいじめられて嬉しいでしょ?」

「それは……。」

「何つっ立ってるの!邪魔になるよ!早くいくよ!」

「あーもー!ちーちゃんのいじわるー!」

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