2014年7月1週②

まずは頭を撫でる。

髪を撫でる。

柔らかい。

ゆっくり撫でつける。

わたしも気持ちいい。

こういう場面で頭を撫でるって、ちょっと恥ずかしい。

いつも撫でてるはずなのに変に意識しちゃう。

たぶん面と向かって撫でるってのが恥ずかしいんだと思う。

あやちの顔も心なしか赤い気がする。

電気を消してるからあんまり分かんないけど。


これでもかっていうくらい撫でる。

もうしつこいくらい撫でる。

可愛い。

いつの間にかぎゅっと目を閉じてる。

あやちが構えてる。

イイ感じ。

目を閉じてるのは都合がいい。

そろそろ次かな。


「ひゅっわあぁぇっ!」


頭を撫でてた手をそのままスライドして、左耳に触れる。

輪郭をなぞる。

耳の上の方から、ゆっくりなぞる。

耳たぶまでたどり着く。

また上に戻る。

同じ道で戻る。


耳の裏を撫でる。

少し爪を立てて、刺激を強くする。

ちょっとカリカリと掻きながら触る。

肩が上がる。

首をすくめる。

くすぐったそう。


「あやち、気持ちよかった?」

「ひうっ!…………。え、きもち…………。わかんない。」

「ん-。じゃあ、くすぐったかった?」

「……。うん、くすぐったかった。」

「そっか。よかった。……。くすぐったいっていうのと、気持ちいいって言うのは結構似てるらしいから。今みたいなのは気持ちいいってことだって覚えといて。」

「…………。うん。」


空いてる右耳に耳元で話しかける。

話しかけながら、左耳をいじり続ける。

外をぐるっと触り終わったから、次は中。

耳の中の穴をなぞる。

凹凸をなぞる。


「ねえ、あやち?どっちの方が気持ちいい?」

「えっ!ど、どっちって?」

「中と……「んんっ!んふっ。」……。外と……「んんああぁっ!」……。どっちが気持ちいい?」

「え、……えっと。」

「ほらどっち?分かってるよね?どっちが気持ちいいのか分かってるよね?言って?」

「そ……外……。」

「ふーん。分かってるじゃん。あやちは偉いねー。」

「んふっ。ん……。んあっ……。」

「じゃあ外ばっかり触ってあげる。」


あやちは外が良いらしい。

身がよじれてる。

うねうねしてるのが伝わってくる。


そろそろ良いかも。

…………。

緊張する。

わたしからするのか。

あやちの目にふっと息をかける。

はっと目を開く。

驚いてる。

でも耳は触ったまま。

左耳をいじる。

くすぐったさに目が閉じそうになる。


「ちゅっ。」

「んっ!?」

「…………。ちゅっ。……。ちゅっ。」

「んっ!……。んふっ。……。んんっ。」

「ちゅぷっ。…………。ちゅっ。……んちゅっ。……。ちゅっ。」

「んんっ。…………。んんーっ。…………。んん。ん。ふー。」


上唇を吸う。

キスというよりも、吸う。

啄んで、離す。

吸い付いて、離す。

ちょっと吸い上げる。

すぐに離す。


下唇に吸い付く。

吸い上げる。

吸って、離す。


唇の上も下もわたしの涎でべしょべしょ。

涎が垂れる。

口の端から垂れる。

それを掬う。

舌で掬う。

掬いながら、左の頬を舐める。

涎を塗り付けるみたいに舐める。

べしょべしょになった頬を涎が伝う。

わたしの涎。

それをまた舌で掬う。

掬って、右の頬にも塗り付ける。

塗り付けるみたいに舐める。

右の頬もベしゃべしゃになる。

右の頬も涎が伝う。

それを舌で掬いとる。

そのままあやちの唇を舐める。


キスはまだしない。

舌もまだ入れない。

唇を舌で舐め回す。

さっきあやちが自分で舐めてた唇を、次はわたしが舐めてあげる。

上書きする。

わたしの色に上書きする。

わたしの匂いに上書きする。

わたしの涎で上書きする。


左耳を触っていた手を止めて、逆の手で右耳を触る。

さっきよりも声が出てる。

敏感になってるから?

それとも右耳の方が感じるから?

それとも唇を舐められてるから?


右耳の輪郭をなぞる。

  唇に唇を合わせる。

上から順番に、耳たぶまで触る。

  最初は軽く触れるだけ。

耳たぶをぷにぷにする。

  ほんとに触れたかどうかわからないくらい。

気持ちいい。

  ちょっとだけ触れる。

ただわたしが気持ちいい。

  ちょっと触れたら、すぐに離す。

ぐにぐにする。

  また、ちょっとだけ触れる。

グミみたい。

  繰り返す。

あんまり伸びないけど、やわらかい。

  あやちの唇がちょっと尖ってくる。

柔らかいけど、硬い。

  餌を求める雛鳥みたいに。

ぐにぐにする。

  だからわたしは『待て』ってする。

また輪郭をなぞって、耳の上まで触る。

  軽く触れるだけのキスを繰り返す。

耳の裏をなぞる。

  あやちの顔が浮く。

全体を爪で優しくなぞる。

  『もっとしっかり触れたい』って。

耳と顔の境目を爪でなぞる。

  でもまだダメ。

下まで行ったら、耳の前側を爪でなぞる。

  まだ『待て』ってする。

耳と顔の境目をなぞる。

  上唇だけを吸う。

ちょっと出っ張ってるところもなぞる。

  あやちの舌が伸びてくる。

耳の中に指を入れる。

  避ける。

グネグネと凸凹に沿って指を動かす。

  まだ駄目だよって、下唇を吸う。

ぐるっと指を回しながら、中を全部なぞる。

  最後にまたちょっとだけ唇を触れる。

そして指を抜く。

  唇を離す。


「ねえあやち、右耳とさ……「んにゃあぁぁんっ。」……。左耳とさ……「あぁ、んんっ。」……。どっちが気持ちいい?」

「…………。どっちも。……どっちもいい。」

「ん?いいって何?気持ちいいってこと?」

「…………。…………。気持ち、いい……。」

「気持ちいいの?どっちも?」

「……。どっちも。」

「ちゃんと声に出して。どっちも気持ちいいって。」

「…………。どっちも…………きm……きもち…………いい。」

「うん。わかったよー。素直でいい子だねー。よしよし。」

「…………。ううぅ。……。」

「でもごめんね、あやち。わたし不器用だからさ、どっちかの耳しか触れないの。どっちが気持ちいいか教えて?」

「えぅ。…………。うぅ……。……みぎ……。」

「ん?どっち?聞こえないとどっちも触ってあげないよ?」

「み、みぎ…………。」

「ふーん。あやちはもっと触ってほしい「ああっ!!」んだ、耳。右耳ね。了解。」

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