第15話 中宮のやべぇ奴ら

「どーしたものですかねー」


 時が経つのも早いものでもう放課後。あれから休み時間を利用して1-Aに行ってみましたが宍倉さんの姿はありませんでした。後で担任教師に聞くと、どうやら学校に来ていないようです。


「と言うか本当に時間経つの早いですね。なんなら遅刻した日よりも早いです」


[そうだな。全授業全爆睡してたからな。時間が早く感じるのも当然だ]


「誰かさんが早朝五時に叩き起こすからですよ。おかげで今日の授業の内容一ミリも頭にありません」


[“今日”の箇所を“常に”に訂正せよマヌケ]


 失敬な!こう見えてあたし学力はそこそこ高いほうなんですからね!入院時代暇すぎて勉強してましたから。


 と、そんなどうでもいい話は置いといて。さて、どうしますかね。欠席しているようでは、宍倉さんの住所も知らないあたしは接触なんてできません。諦めてフツーに帰宅しますか。今日はオカ研の活動も休みなので。


「お前もダメか?」


「だ、だって……宍倉さん怖いんだよなぁ」


 宍倉さん?


 昇降口への途中、一階の職員室前を通っていた時です。職員室の反対の壁にもたれかかりながら、二人の男子生徒が宍倉さんの名を交えて話し込んでいました。二人とも顔つきが重たいですね。片方の手には大きな封筒が。


「だよな。昨日もやらかして二回呼び出し食らったらしいぜ。家近いから先生に手紙渡せって言われたけど、正直関わりたくないんだよな」


「ヤバくね?宍倉さんの家、暴力団のアジトとかじゃねーのw」


「なおさら行きたくねーよ。てか普通に宍倉さん家一軒家だし」


「すいませーん」


 顔も見たことない方々ですが、契約のためなので問答無用で凸ります。当の二人はいきなり話しかけてきたあたしに困惑しています。手ぶらなもう片方はどういうわけかほっぺが赤くなってますね。


「えっ、誰!?」


「か、かわっ……」


「今宍倉さんって言いましたよね。差し支えなければあたしが持っていきましょうか?」


 男子生徒の手に収まった封筒。これは学校を休んだ際、その生徒のためにその日配られた手紙等をまとめて近所の生徒に運んでもらうってやつでしょう。今日はHRに配られた手紙の量も結構多かったので、封筒が分厚いですね。


 皮肉にも宍倉さんがクラスで浮いているのが功を奏し、男子生徒は宍倉さん宅に手紙を届けるのを躊躇っています。そこをあたしが。これなら間接的に宍倉さんの住所も割れるので一石二鳥ですね。


「でっ、でも……」

「あいつの家暴力団のアジトかもしれないっすよ!?」

「普通の一軒家つったろ」


 やっぱり893でしたか。


「大丈夫ですー。仮に家の前でその手の輩とバッティングしてもこの悪魔が何とかしてくれるので!」


 そう言いつつさりげなく視線を悪魔に移します。


[残念だが我の力はまだ完全ではない故、並大抵の人間には使わんぞ。その輩とやらが現れたら貴様一人で何とかしろ]


 何言ってんですかこの畜生悪魔は。あたしを守ってくれる契約はどこ行ったんですか?


「悪魔……?」


(何言ってんだこの人)


「で、でもよく考えれば見ず知らずの先輩に宍倉さんの個人情報漏らすのまずいんじゃ……」


 おっとこの後輩、まともな感性をお持ちのようですね。


「あっ、言ってませんでしたがあたし知り合いなんでフツーに渡してくれます?」


「そ、そうでしたか、じゃあお願いしまっす!!!」


 ですが情報社会の荒波の中で生きてはいけなそうですね。というわけで、宍倉さんの住所をゲットしさっそく彼女に家に向かいましょうか。


 ……って、住所埼玉!?しかも絶妙に乗り換えだるいし金かかるし……やっぱ明日で。


[ダメだ、貴様を見てると不本意な要件は先延ばしにしそうだから今日行け]


 そんなのないですよ!?馬鹿にし過ぎでは!!!


 がァーもうめんどくさい!!行けばいいんでしょ行けば!!!


「つーかあれ二年の南條先輩だよな」


「誰それ?」


「この学校の中宮高三大美少女と中宮のやべぇ奴らトップオブマーヴェリックの二冠制してるやべー先輩だよ」


「このちんけな学校にそんな漫画みたいなやつらいたのかよ!」


「宍倉さんってそんなすんごい先輩の知り合いなのか?それも休んだ時先輩が手紙届けるレベルで?」


「もしや宍倉さんって結構すごかったりする?」

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