世界を救おうとする88歳の訪問者

世界を救おうとする88歳の訪問者

　Q.まずは、あなたのお名前を教えて下さい。

　A.私の名前は、カイル・ホンダと言います。

　Q.ホンダさんは、ハーフでしょうか？

　A.いえ、4分の1だけ日本の血が混ざってます。

　Q.なるほど……、では年齢は？

　A.え？年齢は関係ないと思うのですが？

　Q.一応、統計を出す為にお答え頂いています。

　A.……8歳です。

　Q.え？──もう一度、窺ってもよろしいですか？

　A.……88歳です。

　Q.えっと、28歳とか38歳ではなく88歳ですか？

　A.はい……。

　Q.……ホンダさん。今日来られた目的を窺ってもよろしいですか？

　A.？

　Q.……冷やかしなら、帰って貰ってよろしいですか？

　A.冷やかしだなんてとんでもないです！

　Q.どう見てもあなた20代でしょ？88歳とかふざけられても困るんですよ？

　A.ふざけてないです！

　Q.ではお聞きしますが、生年月日は？

　A.……令和4年です。

　Q.ほら生まれたの今年じゃないですか！──え？令和4年？？？

　A.令和4年の8月8日です。

　Q.完全におちょくってますよね？

　A.そんな事ありません！私は、真剣です。

　Q.今日は令和4年の3月14日、ホワイトデーです。悪ふざけにもほどがありますよ？

　A.違うんです。……実は私、未来から来ました。

　Q.はぁ？

　A.今から88年後の未来から来たんです。

　Q.……それを信じろと？

　A.はい。

　Q.ツッコミどころがあり過ぎて困るのですが……。まず、あなたが、88歳には見えないという事、この時点であなたが信用できません。次に、未来からどうやってここに来たのかという事。そして一番の謎は、なぜホワイトデーのお返しアンケート調査にわざわざそちらから進んで答えると言って来たかなんですが？

　A.若く見えるのは、未来ではそういう技術があるからです。どうやってというのも、未来の先端技術ですから、詳しくは言えません。あとは、なぜあなたの質問に進んで答えようとしたかですが、それはあなたがこのホワイトデーのアンケート調査をきっかけに、遠い将来、世界を亡ぼすから、その前にあなたに警告しに来ました。

　Q.……えっと、──技術はまあ、置いておきましょう。タイムトラベルも、映画なんかのあるあるですね。最後のは、なんです？俺が世界を亡ぼすんですか？ただのバイトですよ？

　A.あなたはこの後、88人目のアンケート調査の後、バイトに嫌気がさし、地下に潜ります。そう、ニートという、未来では禁句となっている職業に身を落とすのです。

　Q.ニートは職業じゃないから！……というか俺がニートになったら、なぜ世界を亡ぼすんですか？

　A.あなたは、ニートに就職後、カクヨムというサイトに一つの論文を掲載します。それが、「ニートを選んだ俺が、美女にモテて何が悪い！」です。

　Q.論文じゃなくてそれ、ラノベじゃん！それに、願望丸出しの絶対人気出なさそうなラブコメですよね？

　A.この論文が、世界中の男性に多大なる影響を与えます。

　Q.大ヒット？まさかの大ヒットなの！？

　A.その結果、世界の男性は働かなくなり深刻な労働力不足、食糧不足が発生して悪循環の中、解決案を見出す事出来ずに、世界は破滅の一途を辿ります。

　Q.ラノベの影響力でかすぎない！？

　A.なので、あなたが88人目のアンケート後、嫌気が差してバイトを辞めない様に引き止めに来たのです！

　Q.……完全にこちらがバイトと思って馬鹿にされているのはよくわかりました。ちなみにあなたが、88番目の方です。それでは、ありがとうございました。こちら粗品のクッキーです。アンケートにお付き合い頂きありがとうございました。

　A.え？ちょっと、待って！あ、時間が！88歳なんて正直に答えたのがいけなかったのかー！

　シュン

　88歳を名乗る若い男性は、次の瞬間、その場から消えていた。

　アンケートを受けた男性はその消える瞬間を見る事無く、バイトを辞めてその場から去るのであった。

　こうして、世界の危機を止める為に未来から送り込まれてきた88歳のタイムトラベラーは、その任務を果たす事が出来ずに未来に戻り、世界の終焉を目撃する事になったのであった。

　Q.この話をあなたは信じますか？

　A.→信じる

　　　信じない