第17話

「番組でも説明したけど、君たちが日本を守るヒーローチームなら、日本消滅が目的のチームにスウカトされる人間もいるんだよ」

 

 由良の話では、両チームが駆使する力には大きな違いがあるという。


「君たちのは、身体能力を超人レベルにまで増幅したものだよね。対する相手は、記録によれば妖術や幻術の類が中心みたいだ」

「……妖術?」

「幻術……?」

 なかなかのパワーワードに、竜馬も一巳も思わず目と目を見交わしていた。


「人間が恐れている存在を現実化できる術者は、過去にもいたことがあるようだ。山犬の化け物は、その山にまつわる伝説から生まれたんだな」

「それって……口裂け女やメリーさんが実際に現れたのと同じってこと? マジで?」

「マジで。そういう術が使える人間がどこかにいて、君たちにしかけてきたわけだ。バトルはもうはじまっている」


 由良が隠れた左目を、髪の上から軽く押えて呟いた。「君たち三人が同じ町に住んでいるというのは、興味深い」

 今度は手のひらで左目を覆った、なにやら意味ありげな格好のまま、由良は考え込んでいる。全神経を集中し、頭のなかを深いところまで探っているようだった。


「ああ……、そうか。あのあたりには、前回の戦いで選ばれた人たちが何人も住む里があったんだな。武術に優れた集団だったようだよ」

「……そっすか……」

「となると、君たちのほかにも血筋の者が近くにいそうだね。敵か味方かはわからないけど」

「はあ」

(もう、ついてけねぇ)


 あれほど張りつめていた竜馬の心は、ほとんど緩みかけていた。緊張が解けたのとは違う。ここまできたらあきらめるしかない。そんな開き直りの心境に追いやられた、というのが正しい。


「いただきますっ」

 

 ようやくペットボトルに口をつけ、やけくそ気味に呷る竜馬につられて、姫野も一気にお茶を喉に流し込んだ。

 しかし、一巳は違った。由良見つめる厳しい目は、この部屋に通された時と変わっていなかった。


「由良さん。あなたはどうして、なんでも知ってるんですか? 過去の記録がどうのってさっき言ってましたけど、あなたってなんなんですか?」


 竜馬はハッとして、ペットボトルから口を離した。確かにそうだった。

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