第2話 無理むりムリ
「さっすが最強の少年兵、期待してるわよ♪」
「任せとけって、それでクラス代表戦はいつだ?」
「四日後よ」
「無理」
「なんでぇええええええええ!?」
ズガガーン と音がしそうな顔で、藤林は涙目になって拳を振り上げる。
「男子三日会わざればかつもくして見よって言うじゃない!」
「お前女子だろ……まぁ致死率三割で生き残っても『殺せ!』しか言えなくなる特訓で良ければ三日で東京最強になれるけど」
「どんな洗脳よ! 辞書で『人権』を調べなさい!」
「訓練内容としては七二時間、一秒の休みも無く俺と殺し合うという豪華仕様に」
「おどれは閻魔大王かゴルァ!?」
「ちょっ、おま、怖いからその目やめて」
藤林は、両目をメラメラと燃やしながら俺を威嚇する。
戦場では多くの猛者と戦ったが、こいつもなかなかの殺気だ。
「ハッ!? ごご、ごめんなさい、今のは違うのあの、機嫌悪くしないでね」
途端におたおたしながら取りつくろう姿を見て、戦場には無い癒しを感じてしまう。
本当にさっきから笑ったり泣いたり慌てたり忙しい奴だ。
「まぁいい、それより一回試合だな、お前のセンス見ないことには作戦も立てらないや」
「そ、そうよ、その通りよ、さ、学校に行きましょ!」
話題を逸らそうとするみたいにして、藤林は必死に喋った。
「そ、そうだ、コーチしてくれるんだから、何かお礼しないと」
「ヴぇっ!?」
俺の脳裏に、程良く大きくも引きしまったヒップと、ピンク色のショーツが克明に鮮明に生々しく鮮烈に細胞繊維レベルで再生された。
「あれ? 顔が赤いけどどうかしたの?」
「いやいやいや、えっとほら、別にお礼なんていいよ」
「そういう訳にはいかないわよ。確かにおない年だけど、あんた程の大人物の時間を拘束するんだから。でも私、お金はちょっと、できれば他の形で」
「だからいいんだよ!」
俺は凄く強い声で言ったので、藤林が小首を傾げる。
「何よムキになって。あんた何か変よ?」
背伸びをして俺の瞳を覗きこんで来た。
藤林の大きな瞳に、俺の目が映った。
藤林の香りが俺の鼻腔を刺激して、たまらなくなって、俺の口が緩む。
「さっき、お前が土下座した時」
「した時?」
「スカートがめくれて……ピンク色の」
察したのか、藤林は今更お尻を押さえて、頬がほんのり赤くなる。
俺は視線を逸らした。
「ごめん」
「いやぁあああああ!」
顔を真っ赤にして、拳をめちゃくちゃにふりまわしてくる藤林。
俺はその全てをかわし、さばき、難なくさける。
「おいちょっと落ち着けって、だからごめんて言って」
「わふ」
なにを思ったのか、俺の隣でしっぽを振っていた柴犬のエイドリアーンが藤林に跳びかかる。
「きゃっ」
小さな悲鳴をあげて、藤林は尻もちを打つ。
「いったー、ててて」
俺の目が限界まで見開かれて血走った。
「どうしたの桐生? …………!?」
藤林視線を落として気付く。
藤林の引きしまったお腹の上で寝転がり甘えるエイドリアーン。まくれ上がったスカート。M字に開かれた足。
藤林は耳まで赤くして、口を金魚のようにぱくぱくさせながら、
「あ あ あ」
と、声を上げながら瞳を震わせている。頭からは蒸気が上がってヤカンのようだ。
スカートを直そうにも、めくれあがったスカートはエイドリアーンの体の下だ。
バックに続いて、ショーツのフロント部分を目にしてしまった俺は、頬を引きつらせて硬直。
ようやく絞り出した言葉は、
「じゃ、じゃあこれでチャラに」
「それはイヤァアアアアアアアアアアアアアン!」
電撃オンラインにインタビューを載せてもらいました。
https://dengekionline.com/articles/127533/
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