第4話 神様なんて、居てもいなくても良いと思う。④

汗を流して落ち着いたら、ちょうど日が落ち始めている。大分涼しくなってきたね。

ああ、私はこの時間が好きだ。夕焼けが世界を照らす。自然が紅く、美しく見える。


それから程なくして目的地に到着した。

事前に聞いた場所だが、周りを見ると少ないながら夕顔草が見える。


今からだとあまり長く採取は出来ないか。

景色を見るのはほどほどにし、夕顔草の採取に励んだ。

世界が紅く染まる。さながら別世界のような景色の中で、私はそれを見つけた。


紅い空間の中で、小さい青く輝く石が転がっている。

精霊石だ。精霊の力が強くなるとその力が凝縮されて出来ると聞いたことがある。


見た事はあったが、実物を手に取るのは初めてだ。かなり珍しい。この辺りは別に精霊がいる訳でもないし、何故だろう。気にはなったが良い拾い物だ。


私は石を袋に詰めて、夕顔草を痛まないようにまとめておく。

十分な数は集まった。あまり摂りすぎても次が困るし。


さて、今から帰りたいところなんだけど……

残念ながらもう日は落ちた。太陽の光が無ければいくら月が出ても暗くて寒い。


もう少しすれば完全に暗くなってしまう。

目の前さえ満足に見えなくなれば歩くのも難しい。


私はまだ周りが見える間に拓けた場所で使い古した天幕を立てる。持ち運び出来るように小さいから寝るスペースしかない。

荷物を天幕に吊るして、私は薄い毛布に包まり寝る事にした。


深い眠に入る直前。それは聞こえた。

…………音がする。這いずる音がする。

私はゆっくりと目を開けて、天幕を僅かに開けた。


ずるずるという音と共に、何かが滴り落ちるような音もする。


私の目はそれほど夜目は効かないが、完全に闇に染まった世界の中で尚黒く巨大な何かが動いているのが見えた。


あれは……何だろう。分からない。しかし、見ているだけで不快に、不安になるおぞましさだった。


私はその塊が完全に見えなくなるまで決して目を離さない。

もうすぐ見えなくなるほど離れた辺りで、ソレは一度だけ振り返り、確かに私を見た。


ただただ深い虚無の穴が、私を見ていた。


…………再び静寂が訪れる。

嫌な汗が背中をつたう。この街に来た時は平和だと思っていたけど、どうにも何かあるのかもしれない。

精霊石が輝いている。関係、あるかもね。


私は深く深呼吸して心を落ち着けて、もう一度眠りについた。


翌朝、私はあの変なヤツの歩いていた場所に行ってみた。


這いずった後と、そこから腐臭がする。

多分これは穢れの一種だろう。


でも穢れは自然と浄化されると聞いた事がある。

街からあまり離れていない場所であんな大きな穢れが居るなんて。


ギルドに言った方が良さそうだね……。

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