特別編 GWの秘密…?

 これは千代と麗華が出会う数日前のゴールデンウィークでの出来事である。



「よっしゃー!ゴールデンウィークだー!」

 家で一人喜ぶ千代。

 親は結婚旅行中ということもあり、今の千代を束縛する者はいなかった。

「おっ…!元気だね~我が弟よ。その有り余るエネルギーを私のために使ってくれるのかい?」

 そう、ただ一人。

 千代の姉を除いては。

「はぁ!何言ってるんだよ、使うわけないだろ」

「う~ん悲しいなぁ。我が弟ならば私のショッピングにも付き合ってくれると思っていたのだがなぁ…」

 明らかに誘っている目で千代を見つめる。

 例え違ったとしても何かをして欲しいと言う意思表示をしていたのは伝わった。

「…分かったよ!ただし貸し1な」

「ありがとう!それじゃあ早速行きましょう!」

 ご機嫌な姉はすぐさま部屋を飛び出していった。


 徒歩20分程度のショッピングモールには人がとても殺到していた。

「ほぇ~すっごいねぇ~」

「連休となると人が集まるのも無理はないだろ」

 事実今日は5月2日。

 ゴールデンウィークの中でも一番外出する人が多い日にちだろう。

 更に今日はこのショッピングモールで服や日用品のセールがやっていると言うのだ。

 混まない訳がないのである。

「それじゃあまずは3階の洋服売り場から行くわよ~!」

 そう言い人混みをかき分けながらどこかへ行ってしまった。

 追いかけようとしたが姉が作った空間に更に人が押し寄せ遂に姿が見えなくなってしまった。

「これだから姉さんは…。しょうがない…」

 千代は溜息をつきながら混んでいない非常階段で3階まで駆け上がった。


 3階へ上がるとそこもまた人混みで溢れていた。

 だが1階ほどスペースがあったためまだマシと言えるだろう。

「遅いぞー!どこをほっつき歩いてたんだ!」

 疲労困憊な千代に対し、余裕の表情を見せる姉。

「仕方ないだろ、俺があんまり人混み好きじゃないの知ってるだろ?」

「う~ん、それでももう少し早く来られたとは思うけどなぁ~」

(…逆にあの人混みをどうやって突破したんだよ…)

 千代がどうでもいいことを考えている間に相変わらず姉はそそくさと走っていった。

「…ああ!もう!」


「…ふぅ。これでとりあえずは終わりね」

 千代の両腕には買い物袋がこれでもかとぶら下がっていた。

 正直いくらセールと言えどここまで買うことは流石に予想していなかった。

「今日はありがとうね~!そうだ!折角だし服選んであげるよ!これで貸し借りなしでいいでしょ?」

 そう言いまた千代を置いて走り去っていった。



「千代君、その服かっこいいですね!」

 麗華から思わぬ一言が千代を襲った。

 突然のことに千代はつい頬を赤くしてしまった。

「ありがとな」

(…帰ったら姉に礼を言うか)

「千代君、それじゃあ屋台巡りしましょうか!」

 こうして休日の秘密へと繋がっていった。






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クラスの委員長の秘密を知ってしまったのだが… 露乃琴音 @tuyunokotone

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