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天の雷撃

 「天の雷撃」(王国歴1517年)は、ボルヤーグ連合王国の礎を築いた伝説の戦い


 「天の雷撃」は、ボルヤーグ王国の炎王ウルスがタイタス王国に対して行った電撃的な奇襲攻撃である。この戦いは、ボルヤーグ連合王国成立の決定打となった歴史的事件として知られている。


 当時、タイタス王国は強力を持った魔術師集団を擁し、ゴンドワルナ大陸の覇権を狙っていた。これに危機感を抱いたボルヤーグ王国の炎王ウルスは、同盟国であるガルシア公国、トレヴィル伯国、ヴェルサ侯国とともにタイタス王国に立ち向かうことを決意する。


 しかし、戦況は当初タイタス王国に優位に進んでいた。ここでウルス王が取った戦略が、「王の街道」を利用した奇襲攻撃だった。「王の街道」とは、初代ウルリック王の時代から整備が続けられてきた街道網のことである。


 ウルス王は疲弊した兵を次々と王の街道を使って後方に下げ、新たな兵士と入れ替えつつ進軍を続けていった。これにより、ウルス王の軍は常に万全の状態で戦闘を継続することができた。


 この電光石火の進軍速度と、途切れることのない兵站補給は、当時の戦争の概念を覆すものだった。まさに天から雷が落ちるがごとき速度であったことから、「天の雷撃」と呼ばれるようになった。


 「天の雷撃」によってタイタス王国は瞬く間に攻め落とされ、タイタス王は討ち取られた。この勝利により、ボルヤーグ王国を中心とする連合王国の基盤が確立された。タイタス王国と魔族によって疲弊しきっていた他の三か国は、実質的にボルヤーグ王国に吸収されている。


「天の雷撃」はウルス王の戦略的才能を示す事例として、現在でも軍事教育の教材として取り上げられることが多い。また、この戦いはボルヤーグ連合王国の人々にとって、国の誇りであり、アイデンティティの象徴ともなっている。



~ 「天の雷撃」の決断 ~

 

 炎王ウルスが「天の雷撃」を決断し、急ぎタイタス王国を滅ぼさねばならなかった理由には、以下のような背景があったとされている。


1. 悪魔勇者召喚の阻止

 タイタス王国の魔術師たちは、禁忌とされる「悪魔勇者召喚」の儀式を行っていた。この儀式が完了すれば、召喚された悪魔勇者の力によって、タイタス王国がゴンドワルナ大陸全土の覇権を得ると考えていたウルス王は、この脅威を早期に排除する必要があった。


2. 人命の尊重

 悪魔勇者召喚の儀式には、膨大な数の生贄が必要と言われている。タイタス王国は、すでに支配下の国々や周辺諸国から多くの人々を連れ去っており、さらなる犠牲者を出すことは許容できなかった。タイタス王国が滅亡するまでに少なくとも五千人以上の犠牲者が捧げられてと云われている。自国の民からも多くの犠牲者が出ていることを知ったウルス王としては、人命尊重の観点からも、早期の決着が求められたと思われる。


3. 同盟国の保護

 ガルシア公国、トレヴィル伯国、ヴェルサ侯国は、ボルヤーグ王国の重要な同盟国であった。これらの国々もまた、タイタス王国の脅威にさらされていた。天の雷撃の直前では、これらの三か国はもはや戦闘を継続することが困難な状態にあった。同盟国を守るためにも、ウルス王はタイタス王国を速やかに打倒する必要があった。


4. ボルヤーグ王国の危機

 タイタス王国の魔術師たちは、ボルヤーグ王国への浸透工作を始めていた。内部から崩壊させられる危険性もあり、早期の戦争決着が不可欠だった。


 これらの理由から、ウルス王は「天の雷撃」という決死の作戦に出たと考えられる。結果として、タイタス王国は滅ぼされ、悪魔勇者召喚の脅威は去ったものの、そこの作戦が見事に成功したのは、様々な幸運に恵まれたことも大きい。そしてウルス王の決断は、ゴンドワルナ大陸の歴史を大きく変えたのである。

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ド・ラヴィルダ物語集 帝国妖異対策局 @teikokuyouitaisakukyoku

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