その感じ

あきのななぐさ

第六感のそのまえに

 人の持つ感覚を調べるために、ある特殊な能力を持つ人の感覚を擬人化する事に成功した。


 第一の感覚は見ること、すなわち視覚。「オレはモノを見るのに目が無いぜ!」

 第二の感覚は聞くこと、すなわち聴覚。「しー、だまっててよ」

 第三の感覚はにおいをかぐこと、すなわち嗅覚。「だれが、口が臭いって!?」

 第四の感覚は味わうためのこと、すなわち味覚。「我が流派は――」

 第五の感覚は触ること、すなわち触覚。「イー!」


 私たちがこの世界を経験し理解するのは、これら五感を通じて受け取る情報であるのだが、これらを超える感覚として、第六感があげられる。これは、これらの感覚とは別に、理屈では説明のつかない、鋭く本質をつかむ心の働きの事を示す。勘とか、インスピレーションといった表現で現されることが多い。


「ちょいまて! 誰かがオレの隣に居やがる感覚だぜ! 見えないけどよ! オレの勘はよく当たるんだぜ!」

「だれさ? 何も聞こえないよ。でも、確かにそんな感じがあるよ。ワタシも勘が鋭い方だからわかるよ」

「何もにおわないぞ? でも、それくささはあるな。ツーンと来た!」

「甘さも辛さも酸っぱさも、全てをまとまると、あとは勘で言い当てるのみ」

「イー?」


 そう、実はそれこそがこの特殊な能力を持つ人の感覚。第零番目の感覚を擬人化したもの。すなわち、霊感。


「ふふふっ、ふふっ、ふふふふっ、ふっ……」


 その姿の見えない声を聞いた瞬間、全ての者の背中が、冷たい感覚にさらされました。


〈了〉

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その感じ あきのななぐさ @akinonanagusa

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