第25話

「もしも大山君に陽性反応が出たら、遊星も……」



ヒナはそう言って鼻をすすりあげた。



「大丈夫だよヒナ。そうと決まったわけじゃないんだから」



ヒナの肩を抱き寄せて必死に言う。



しかし、もしも陰性が出たらどうなるのだろう?



薬物でないとしたら、どうして突然みんなの性格が変化したのかわからないままになってしまう。



まさか、彼女自身の体液になにか麻薬的な成分が含まれているとか……?



そこまで考えてあたしは左右に首を振った。



なにを考えているんだろう。



そんな非現実的なこと、あるはずがない。



彼女はどこをどう見てもただの人間だ。



前に人間のマスクをかぶった悪魔のようだと感じたけれど、本物の悪魔なんているワケがない。



「妙だよな」



柊真が顎に手を当てて呟いた。



「どうしてみんな虫に関してそんなに熱心になってるんだ? 他の部分ではいつもと変わりないのに……」



「悪魔じゃなくて、虫なのかも」



あたしはポツリと呟いた。



それで、キスをすることで仲間を増やしているのかもしれない。



彼女にキスをされた人間がまた別の人間にキスをすると、その相手も感染する。



そう考えるとギャル3人組にも変化が訪れた原因が理解できるのだ。



「虫?」



柊真が怪訝そうな顔をあたしへ向ける。



「たとえば人間に寄生する虫とか」



ハッとして言葉を続けた。



確か、そういった虫もいたはずだ。



悪魔なんかよりもよっぽど現実的な話しだ。



寄生する虫は変化し、人の感情をも操ることができるようになっているのかもしれない。



「今からでも、調べてみようよ!」



ヒナが懇願するようにそう言ったのだった。

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