第16話
「虫になにをしようとした」
男子生徒の1人がそう言いながら先生の体の上に馬乗りになった。
体格がいいので、それだけで先生は身動きが取れなくなってしまう。
もう一人の男子生徒が殺虫スプレーを手に取った。
「なにって、退治しようとしたに決まってるだろ」
先生は困惑した表情で答えた。
馬乗りになっている生徒は上半身を屈め、先生の両腕を床に押し付けて固定した。
「なにしてるの?」
近くにいた女子生徒に声をかけられても、男子生徒の凶行は止まらなかった。
スプレーを持った男子生徒が先生に近づき、顔の前にしゃがみ込んだ。
なにかを感じ取った先生が一瞬にして青ざめ、そして「やめろ!」と叫ぶ。
口を開けたのが悪かった。
男性生徒はそのタイミングを見逃さず、先生の口の中に殺虫スプレーを噴射したのだ。
先生はその場でもがき、首を左右に振る。
しかし男子生徒はスプレー缶を先生の口の奥までねじ込んで噴射し続けたのだ。
しばらく呆然としてその光景を見つめていた生徒たちが、我に返ったように悲鳴を上げる。
「誰か他の先生を呼んで来て!」
「救急車も!」
あちこちから声が上がり、教室内はあっという間にパニック状態に陥った。
しかし、男性とはまだスプレーを噴射し続け、先生の鼻や口の端からモクモクと白い煙が立ち上りはじめた。
咄嗟に視線をそらせたその先にいたのは、ほほ笑んでいる大西さんだった……。
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