第55話 月人の記録参 追伸

 炊事遠足の日の夜、美咲は自室のベッドの上に枕を抱えながら座り、今日あったことを順々に思い出す。


 月人と額をあわせた感触、月人の料理の味、トイレで月人に思い切り抱きついたこと、そしてなによりも自分を闇の眷族(ダーカー)から守ってくれた姿。


 彼女はうしろにぱたんと倒れると白い天井を見る。


「……月人くん」


 だがそこで美咲はある重大なことに気付く。


「あれっ? そういえばあたし、トイレから飛び出して月人くんにしがみついたとき……」


 蛇口は外についている、手を洗っているわけがない。


「っっ!?」


 途端に美咲の顔が首元まで赤くなり枕を天井まで跳ね飛ばし叫ぶ。


「お願い月人くん、気付かないでぇーー!」


 下の階で両親があいつは何を叫んでるんだと言っている頃、月人は。


「あっ、そういえばトイレであいつ……」

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