第11話 アルフ攻略

 あー、しんどい……。

 パーティのチームワーク、ひいては生存の為とは言え、どうしてボクばかりがこんな目に。

 本来はカリスの仕事だろうに。

 最後に取っておいた癒しを求めよう。

 アルフはこのパーティにおいて唯一無二の癒し。

 

 お互い、かぶりものを外して話すのは初めてだね。

 くるくるの天パに、結構つぶらな瞳をしている。思った以上に純朴そうな顔だった。

 しかし、拠点なのに、

「それ、何でブラつけてんの」

「ブラじゃないよ! 大胸筋矯正サポーターだよ!」

 よしよし、こちらの調教は順調だ。

 と言う冗談はさておき、何で日頃からあぶない下着姿で生活してるんだよ。

 まあ、ヒトの趣味をとやかく言うのも野暮か。

 それよりも。

「キミ、マジで強いね。お世辞じゃないよ」

 これは本心。

「そ、そう?」

「ああ。本来の仕事である盾役タンクが完璧なのはぶっちゃけ当たり前だと思うんだけど……まず、一瞬の判断ミスで“人生の不浄負けモロだし”になりかねない格好で生き延びてきた事を評価したい」

「ふじょーマケ?」

「ああ、この世界に相撲は無いんだった。えっと、攻撃を受けた拍子にそのパンツがズレたり切れたりするリスクのこと」

「ああ! そうだね、ダンジョンで下半身ハダカになると、衛兵に逮捕されるよ! 1ヶ月のダンジョン出禁と、拠点内で強制労働の刑」

 そう言う法整備は万全なのかよ……。

 まあ、閉じ込められると忘れがちだけど、外に観客いる話だもんね。

 と言うか、それ承知の上でなおもコレ装備してられるってマジで勇者だな。しかも、一番被撃率の高いタンク役だよ?

 そうか!

 自らをそうした崖っぷちに置く事で、盾使いのポテンシャルを極限まで引き上げているのか!

 ……うーん。

「それもそうだけど、あんな使いづらい武器を使いこなせてるのもホント凄いよ」

 これも本心。

「僕、アタマ悪いから、勢いでなんかこう、やってるだけだよー」

 嫌味と紙一重だけど、他意は無いのだろうね。

 つまりは“そーいうタイプ”か。

 さて、ここまでする必要はないけど……好奇心のために。

「キミとは良い相棒になれる気がするよ」

「えっ、そうなの?」

「ああ。

 ボクは多分、このパーティではリーザみたいな遊撃要員になるはずだ。その時その時で手薄になったポジションの穴埋めっての?

 それには、キミとの阿吽の連携が必要不可欠となるはずだ。

 だから、もっとキミの事を知りたい。ボクを信じて【分析】させてくんない?」

「そういうことなら、いいよ!」

 チョロいね。

 ヒト疑う事知らなさすぎ。

 

第九オーク・クランのアルフォンソ(アルフ)

【力:77(130) 体力:114(200) 知力:44(50) 反応:77(100) 器用:41(50)】

 

 ビンゴ。

 技巧派のオークっすね。

 オークとしてはフィジカルが弱く見えるけど、こっちの世界にきて完全に麻痺しちゃってるよね。

 地球人の限界値がそれぞれ100だと言うことに立ち返れば、これでも充分過ぎるよ。

 で、特筆すべきはやっぱり【知力】だ。

 部活や仕事で、たまにこーいうタイプいない?

 言動だけ見るとおバカキャラなのに、実戦では不思議と要領いいやつ。

 地球の精神医学において、人間の知性は二種類あると言う。

 言語性のものと、動作性のもの。

 あるいは、右脳と左脳。

 このコは多分、44ある知力のほとんどを右脳ーー動作性の知恵に極振りしてるタイプなのだろう。

 【反応】と【器用】の数値も良い感じだし。

 だから、武器が秒単位でコロコロ変わっても、使いにくそーにしながらも、何だかんだで上手く切り抜けられてる。

 で、多分だけど、彼自身、日頃からあの変身武器が何形態あって、何が出てくるかをまるで把握していない。

 普通に考えて、強いてあれを使いたいなら、やるべき事はまず、出てくる全武器の把握からだろう。

 文字通り、変身ごとに出たとこ勝負、ってやつなのだろう。

 それって、すげーストレスだろうけどね。

 どうしよ、どうしよ、何とか対応しなきゃ! ああっ、次の武器が出てきたよ!

 これはこーいう構造の武器だから、何となくこーすれば……! よし、命中した!

 ふぅ。今回も辛うじてうまく切り抜けられたぞ……ってのを延々繰り返すんでしょ?

 しかも、本業の盾を的確に運用しながら。

 見た目以上に苦労人なのかもね、彼。

「で。それ、何でブラつけてんの?」

「NONO、レイくん。これはブラじゃなぁい……大胸筋矯正サポーターだよ」

「まあ、それはそれとして、これからよろしく頼むよ相棒」

「相棒かぁ……いい響きだ!」

「で、それなんでブラつけてんの」

「ブラじゃない! ブラじゃないんだよ! 大胸筋矯正サポーターなんだよッ!」

 やばっ、こっち方面でいらん事吹き込みすぎた。

「静かに! アルフ、静かに!」

「あっ、ああ、ごめん……」

「で、それなんでブラつけてんの」

「ブラじゃないんだよォォォ!」

 

 ボクのステータス?

 そんなもん、不特定多数には見せないよ。

 そんなことしたら、リーザに対して不誠実じゃないか。

 キミにしか見せないよ、って言ったんだからさ。

 

 なんかさ。難しいよね、ヒトの心って。

 これだけ操るのが簡単なのに、構造の理解が全然出来ないの。

 やっぱここの連中、リアルゲーム脳に毒されて、どいつもこいつも狂ってるんだよ。

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