第30話 同窓会みたいだよ

 翌朝、朝食の用意が始まった。

 いつもの様に穏やかな朝食の用意の筈が、その日は何かが違っていた。

 運ばれる料理は、いつもの倍はあったし、使用人の方々の足取りが異常に軽い。

 音もたてずにスキップして料理を運ぶその技術、流石、凄腕メイドです。

 そして、両親を含めて、皆気持ち悪いくらいの笑顔だ。

 たかが朝食なのに可愛いドレスを着る事になったのも、なにか意図がありそう。

 私としては、あまり感情が追いついていない。

 ちょっと1日くらい家を空けたくらいの感覚なので、周りと温度差があった。


 そんな違和感を感じ、準備が終わろうとしている時だ。


「その朝食、私も頂けるかしら?」

「レニちゃん!来てくれたのね!」


 私は何も変わっていないのに、レニちゃんの背は伸びていた。

 それだけじゃなく、髪は後ろで束ねて乗馬服を着ている。

 総じて雰囲気は、カッコよくなっている。

 レニちゃんの領地は馬の数も多く、名馬を産出しているから、乗れるのが当然みたいな風潮でもあるのかも。


「イメチェンしたんだね」

「馬に乗れるようになったわ、まだポニーだけどね、それでも騎乗戦闘は出来る様になったのよ!」

「凄いっ、カッコイイ!}

「ま、まぁ、今日は急いでいたから乗せてもらったけど……、でも何かあった時、自力で駆け付けれるようになったのよ、困った事があれば私に言いなさいよね!」


 あ、一人で馬にのって走って来たわけじゃないんだ。

 でも、成長した感じがあっていいね。

 羨ましいな。


「ふっ、俺の事も忘れてないよな」

「エレン!元気でしたか?」

「ああ、失踪した婚約者が帰って来たんだ、一番乗りで駆け付けたかったんだが」

「一番乗りは私よ、遅かった様ね」

「くっ」


 エレンは悔しそうにするけど、心底悔しいとかじゃなく、競ってるのが楽しい感じがした。レニちゃんを好敵手ライバルに見立ててるのかな?


「あの、婚約ってどうなったのですか?」

「継続してるぞ、俺は相手が失踪した程度で破棄する様な、薄情な人間になった覚えはないぞ」

「あはは、そっかぁ」

「まぁ、生きてるって信じてだけだが……」


 婚約継続かあ、でも最近、エレンも悪くない様に見えて来てるのよね。

 これだったら、お姉さまと婚約しても悪い結果にならない気がするんだけど…。

 それにしても、エレンも身長伸びたなぁ。


「エレン、なんだか凛々しくなった?」

「分かるか?調査団を率いる様になったんだ。このあたりの悪党は結構やっつけたぞ、人相手と言うのは中々加減が難しいが最近では死なない程度に殴れるようになったんだぜ?」

「おぉ~、凄いね、成長したね~」


 いや、それまで殴ったら確実に殺してたって事??

 おっかいないよ。


「はぁはぁ、間に合ったかしら」


 息を切らせて、部屋に入って来たのはお姉さまだった。

 修道服姿が、超かわいい!

 そうです、まだ8歳、かわいい盛りです。久しぶりに鼻血がでそう。

 そして、みんなそれなりに成長してる。


「お姉さま、お帰りなさい」

「それを言うのは私のセリフよ。お帰りなさい、リリィ」

「はい、ただいまです、お姉さまも成長したのですね」


 特に胸が。


「ええ、貴女を護る為に、アンデッドなら滅せれる程度にはなったわ、ゾンビが出たら私がなんとかするわ!」

「お姉さま、凛々しいです。カッコイイ!」


 お姉さまの照れる姿もまた可愛いです。

 たしか、前日譚ゲームでは今から2年後くらいに聖女修行を始めるんですよね。

 そして、本編じゃ聖女の力でヒロインに敵わないってプレッシャーを感じるんですよね。

 3年も長く修行していれば、もしかするとヒロインより能力伸びるかも?そうなると良いなぁ。


「聖女様の本分は浄化、回復、守護でしたね、浄化以外はどうなのですか?」


 そう、ヒロインはオールマイティ型。何でもできちゃう天才というのが表の顔。

 実はその能力は努力の成果で、何年も修行した結果得れた物だった。

 それでも能力はとんでもなく凄い、というモノではなく、人並み以上といった程度で決してチート級とかではなかったハズ。


「それは、まだちょっと修行中でぇ……、でも本当はね回復を頑張りたかったのよ?回復できたらリリィが助かるかもしれないし、もしかすると歩けるかもしれないでしょ?」

「残念ながら、適性が浄化に偏っていたって事か、それだけでもスゲぇじゃん」


 本編ゲームのルルゥも確かオールマイティ型だったと思うけど。

 改変されちゃったのかな。

 それとも、想いの強さが影響しているとかかな。


「そうよ、私なんて守護に少し適性がある程度だったわ、だからルルゥは凄いのよ!」

「へぇ~、レニちゃんも聖女修行したの?」

「う、うん、ちょっとだけね」

「レニは逃げちゃったのよね、あまり成長しなくて」

「あははは、ダセぇ~」

「エレン様ぁ、笑わないでえ、あ、でも局所結界なら張れるのよっ」


 みんな楽しそうだ、まるで同窓会みたい。

 それぞれ成長している。

 私も何か成長したい。

 たった1年、それでも1年。1年も置いてけぼりで、みんなが眩しすぎるよ。


「いいなぁ、私も聖女検定受けてみたいなぁ」

「駄目よっ、リリィにそんな負担はかけれないわ」

「いいんじゃないか?」


 そう言ったのは、いつの間にか入口に立っていたアレクだった。


「アレク!お前、何処行ってたんだよ!」

「ああ、アレクも無事でよかったわ」

「アレク様の身長、私より低い…?」


 レニちゃんに身長を抜かれたアレクは少し悔しそう。

 体の成長と言う点では私と同じ様に、1年のハンデがあるから仕方がないのだけど、ちょっと辛そう。

 顔が引きつっている。


「ワイバーンで王都と往復してたんだよ、疲れたよお、リリィ、癒して~」

「おい、癒してもらうのは婚約者である俺だけの権利だ!」

「僕だって、今までリリィを護った功労者だぞ。それくらいの権利はあると思うんだ、そうでしょう父上」


 んん?父上!?


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年齢の整理

・7歳(実質6歳) リリィ、アレク

・7歳 レニ

・8歳 ルルゥ

・9歳 エレン、スミレ

リアルにあったらいいな、浦島効果。

この頃の子どもは年に身長が平均6cmも伸びるから、身長差やばいね。

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