第17話 婚約者とは初対面だよ
茶番でしかありませんが、お父さまへの挨拶と言う事でエレンが挨拶に来ました。
「それでどうして、アレクまでいるのですか?」
「いや、いいじゃないか、友達だろ?」
「………友達でしたっけ?」
「ひどいっ、あんな事もした仲なのに!?」
「コホン、あんな事とは何かね」
「お父さま、大丈夫ですよ。取り立てて言うような話ではありません」
ただ一番反応しているのは、エレンの方だった。
子どもの様に自分の方がより仲がいいとアピールしたいらしい。
「俺の婚約者だぞ、控えたらどうなんだ?ここはお前の出る幕じゃない!」
「友達だから遊びに来るのは当たり前です、兄上こそ初対面の癖になれなれしいですよ!」
「仕方ないじゃないか、婚約者だぞ、婚約者!ただの友達のお前とは違うんだ」
「はっ、それが何ですか、僕とリリィは一緒にベッド──」
枕を投げつけ、口を滑らしそうなアレクを牽制した。
それはヤバイでしょ!お父さまが居るのですよ!
「おっと、リリィから口止めをされてしまった、そうだね僕達の秘密だったね」
「そ、それは仲のいい友達同士で許されるという、枕投げだろうか……」
「は?い、いえ、これはただの、何でしょう……そう言うのじゃないんです」
「じゃあ、俺とも枕投げしてくれるか?」
「駄目です、ここには枕は1つしかありません、こういうのは何個もあるときにする物ですよっ」
このタイミングで、お父さまは頭が痛いと言って部屋を出てしまう。
ちょっと待ってください!この二人、いえ、一人でいいから連れてってくださいよ!お父さまぁぁ!
「そうだ、今日はプレゼントを持って来たんだ」
「僕も持って来たよ!」
アレクが持って来たのは松葉杖。有難いんだけど、腕の力も弱いのよね。残念だけど、飾りにしかならないかも。
エレンが持って来たのは魔道具『レストパンツ』、オムツ型のあれです!卒業したからもういらないわー!
でも悪意はないんだし、有難く貰いましたよ。でも、女性に下着のプレゼンとってどういう意味なのか分かってるのかな?もっと親密になりたいとか、ちょっと大人びたは話しなんだけどね。知らないんだろうなぁ。というかオムツって下着に入るんですかね?
「それで、気に入って貰えたか?俺のプレゼント!」
「え、ええ、有難く思いますわ」
「じゃあ、お礼をくれよ」
「お礼?」
「婚約者にプレゼントを送って嬉しい場合、頬に、その、キ、キスをだな。するって聞いたのだ」
「えー…誰に聞いたのですか。まぁいいですけど、近寄ってくださります?」
順番に流れ作業気味に二人の頬にキスをしたけど、アレクは少し嬉しそうな程度、問題はエレンだ。
「いいな、うん。これはなかなか、ドラゴンと戦った時くらいドキドキする。これが婚約者同士の友情と言う奴か」
私とアレクは目が点になってしまう。
婚約者同士の友情って何さ!?やばいな、一回りして可愛く感じる。アレクも同じ様に感じてるんじゃないかな?いや、吹き出しそうになってるから、きっと面白がってる。そうだね、私達、エレンと比べれば中身年齢は年上だからね。なんだか
「所で今日は何処にもいかないのか?魔物退治とか」
「行きませんよ!そんな物騒なのお父さまが許してくれません」
「そうか、つまらないなぁ」
アナタ戦闘民族、ワタシ引籠民族、ワカリアエマセンよ!つまらないからと言って、椅子を前後にガタガタと動かす、ほんと子どもだ、というか8歳だから当たり前かな。そういえば、家出の話、まだアレクは知らないんだっけ。
「そうだ、お土産というか、なんというのだろうな?姫の望みを叶える事が出来るかもしれないぞ」
「早いですね、どのような方法ですか」
「グラフファー、持ってこい」
「はっ」
しばらくして連れてこられたのは、猿ぐつわをされ縛り上げられた男性。誰?ってなっていると、なんとゼレイム・ロングナイト、侯爵子息でした!ふごーふごー!って何か言いたそうですが、全く分かりませんね。というか、これ、誘拐ですよ!
「えっとぉ、この人をどうしろと?」
「コイツが、精霊の森の開拓者だ。姫の好きにして良いぞ!」
えっへん、獲物を捕らえて来たおぉって言ってる猫の様に、アピールするエレン、褒めて欲しいという顔つきだ。
「うわあ、えらい、えらいねえ。でも人を拉致っちゃいけないわ、とりあえず猿ぐつわだけも外してあげて」
野獣を褒めて伸ばすって大変だなぁ。
「てめぇ、ファーネストのリリィルアだな!こんな事をしてただで済むとおも(バキッ)」
「おい、誰が俺の婚約者の名前を呼んでいいと言った。殺すぞ」
「ステイ!ステイ!エレン落ち着いて!」
この仕打ちには、さすがのアレクもびっくり。勿論私もですよ。ゲーム中でこんな描写ないですよ。感情のふり幅大きすぎるよ!
殺意に満ちた目つきを向けられてゼレイムは怯えまくり。もうあんな生意気な事を言いませんと泣きながら言って助けてと懇願する。
「怯えてるじゃないの。よしよし、可愛そうだねぇ」
「次はないからな!」
「ひいいい」
「えっと、それで、精霊の森の開拓を止めて欲しいの、お願いできる?」
「でも、あれは父上の悲願なんだ、その命に背く訳(ガシッ)あ、あ、あ、痛い、痛いから!」
エレンがゼレイムにアイアンクローを極めた。
そのまま放置すると、この人死んじゃうよね?どうしようかな。
「リリィルア様お願いです!助けてっ、お願い、助け、お願いですうううう、あ、あ、あ、なんか変な変な世界が見えて来た」
「エレン、ストップ、ストップですよ!」
エレンは私の言う事を律儀に守ってくれるいい子です。
いや、なんで、こんなに従順になってるの?訳わからないんだけど。
「エレン偉い偉い」
「そ、そうか、じゃあまたしてくれるか?してくれるのか?」
頬を指差すあたり、余程気に入ったのでしょう。
仕方なく軽くキスをしてあげると、エレンはご機嫌になった。
「リリィルア様、あの、精霊の森の開拓、本当に辞めますから、その人こちらに近づけないでください」
「じゃあ、精霊の森を元に戻すって誓約書を、貴方のお父さまに書いてもらます?」
「はい!必ず、持ってきます、だから、ほんとお願いします、天使様……」
天使様ってなに、野獣を飼いならしてるから私が神聖な何かに見えたのかな?
「えっと、グラフファーさん、紐をほどいてやって貰えますか?」
「畏まりました」
精霊災害の件、これな風にいとも簡単に解決していい物??
やったね、二年もかからずに解決ですよ?早くない?シナリオ破壊してない??
あ、でも、これだと、侯爵の失脚に繋がらないなぁ、フォーグとの約束どうしたらいいかな、とりあえず直接会った時に断罪してみよう。
それから、エレンとゼレイムは一緒の馬車に乗って、誓約書を作りに領地に戻る事になりましたが、ゼレイムの切望により私まで行く事に。
あの二人を同じ密室に閉じ込めるというのは中々に残酷なので仕方がないですが、クマに乗る訳にはいかないので、どうなるのかと考えていると、エレンが軽々と私をお姫様抱っこします。凄く恥ずかしいのですが背に腹は変えられないというか、我慢するしかありません。そこのアレクは吹き出しそうになってるし。
でも、侯爵が素直に誓約書に署名するかな?
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ちょっとだけ補足&予告
ちなみに、ロングナイト侯当主は8話の時点で本当に死んでいます。
それをあたかも生きている様に見せかけてるのは
これまで何かに署名する際も執事が代筆していたので筆跡も問題ありません。
果たしてこれで3年も秘密が守られれるのでしょうか。
次回「暴かれる侯爵の秘密!侯爵は二度死ぬ!※」をお待ちください。
※タイトルは都合により変更する場合があります。
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