第10話 初めての外出だよ1

 問題です。


 回復の泉の正しい利用方法は?

 1.飲む

 2.泳ぐ

 3.浸かる

 4.潜る


 正解は?

 どるるるるるる~。


 3番です!


 ※初めての親公認外出でテンションが狂っています。


 という訳で、沐浴もくよくになるのかな?ただの、水浴びですね。

 ご令嬢が集まっているとは言え、みんな子どもだから性別関係なしに皆で入るのかと思えばそうはならないらしい。

 考えても見ればアレクは色んな意味で駄目ですよね。中身の年齢に乖離あるし。

 モブ子3人とレニちゃん、お姉さま、私の幼女6人と、私の補助の為に二人のメイドさんが一緒に入る事に。

 回復の泉はそんな人数が入っても余裕の広さがあった。森の中やダンジョンにある湧き水みたいなイメージだったのに、何かコレジャナイ感が凄いです。そして竹で出来た目隠しフェンスが綺麗に並べられ、地面は舗装されている。泉と言っているけど、完全にお風呂です。ファンタジー要素なんてありゃしない。これ作った人、絶対日本人だよ。


 そしてみなさんが服を脱ぐ。入浴の時間です。

 自分の残念な裸姿の事なんて忘れ、彼女達の一糸まとわぬ姿に舌鼓を打ち、目頭がと鼻孔が熱くなるのを感じます。


 や、やばいでしょ、特にお姉さまの全裸なんて見たら尊死するかもしれません。

 あ、できたら、イベントスチル保存できませんか?じゅるるるー。

 ※初めての親公認外出でテンションがとち狂っています。


 この世の楽園のような光景に、私みたいな不健康児が混じると台無しだと思うのですよ。ここは、じっくりと泉の外から観察して目に焼き付けてもいいですか?いいですよね?ぐへへへぇ。

 ※初めての親公認外出でテンションが暴走しています。。


 やばい、想像しただけで鼻血でそう!

 ここはお友達の手前、気合で我慢。くーるだうんです、くーるだうん。

 流石に泉の中に、鼻血ドバーなんてするとドン引きの大惨事ですからね。


 私は自力で歩ける距離が短いので、脱衣所から泉までメイドさんに負ぶってもらって行く事に……なるかと思いきや、お姫様抱っこで運ばれ、先に泉に入っていたメイドさんに受け渡し。そのまま赤ちゃんの沐浴の様にそっと泉に浸けられた。

 これって、ほんと、ちょっとした羞恥プレイですよ。何だかすごく恥ずかしい。


 そして泉の温度は冷たいのかと思ったら少しぬるめの温泉の様な感じでした。この世界でお風呂に入った記憶なんてないから、染みわたります。 

 レニちゃんが肩まで浸かってみんなで100まで数えようと提案してきた。

 最初は声が揃ってたのに、20を超えた当たりから、モブ子ちゃんズの声が小さくなり、70超えたあたりで、レニちゃんもごにょごにょ言う様になった。

 無事完走したのは私とお姉さまだけ。

 何だ、わが軍は圧倒的ではないか。わははー。


 そして、回復の泉の効能なのですがよく分からない。

 ですが、疲れている人には効果が高い様で、両親は大喜びです。

 私はというと、HP一桁のキャラにべホイミかけるような物ですよ。

 要は効果が殆ど無かったという事です。

 残念です、本当に。


「あれ?ちょっと腕をみせて?」


 レニちゃんの言われるがままに、腕を見せると、何か違和感を感じた。

 まじまじと見られた上、ぷにぷにと優しく揉まれる。


「ちょっとマシになってるんじゃないかしら?肉付きに不健康さは感じないわね」

「リリィ!来て本当に良かったね!」

「もしかしてまともに歩けるようになったかな!?」

「歩いてみて!早く!はやくぅ!」


 駄目でした。

 でも見た目がマシになったは良かった。

 入浴イベントスチル混ざる権利を得た気分です。


 それはそれとして気になる事と言えば、この泉、なんと本編にも出ていた無かったという話。ゲーム中の要素みたいな物や場所が現実に現れた事に違和感を感じます。

 しかもちゃんと効果はある様ですし、なんなのでしょうね。


 私が気にしている事、それはズバリ、本編、前日譚に続く第三弾の作品の存在、または修正パッチでの実装。ざっくりとしたただの妄想でしかないけど、私が前世で死んだ時点以降に作られた可能性を考えてる。

 もちろん「企画段階ではあった」とか「実装してたけどバグで出なかった」とかも有りうるし、さらに、PS7やネンテンドウブリッヂには実装されてたけど、スマホ版には無かったなんてのもあれば可能性は広がっていくけど、ここは第三弾と信じたい。だって、新作だって思う方が心躍るのよ。

 その新作の要素に触れているという事を極大解釈をすれば『新作をプレイしている』という事。

 そういうのって燃えない?燃えるよね。萌えでもいいけど。


 という訳で、この回復の泉みたいなのは凄くワクワクする。

 他にもっとないかなぁ、有志の誰か探してまとめサイトにリストアップしてくれると良いのだけど。※この世界にそんな物ありません。


「ね?アレク!」

「いや、突然振るなし!」


 私達は浴衣を着て、ほんのりと床暖房が効いた部屋で巨大なクッションに埋もれくつろいでいる。

 右にはアレク、左にはレニちゃんがくつろいでいて話し相手に困らない状況。

 ベッドの上でゴロゴロするのもいいけど、こう言う所でウトウトするのも良いよね。

 ちゃんとフルーツ牛乳も飲みましたよ、美味しいね。温泉入った~って気分なのに、実際に入ったのは回復の泉。

 というか、とういうかさ、フルーツ牛乳がある事自体、変じゃない???

 この床も温かいし、あ、卓球やピンボールもある…。完全に温泉宿じゃん!


「ここ変じゃない?」

「う~ん?どこがあ?」


 ダメだコイツ、溶けてやがる。他を当たろう。レニちゃんしかいないけど。


「レニちゃんレニちゃん、ここの施設って誰が考案したの?凄く独特よね」

「……あなた、まるで『一般常識を知ってます』って言い方ね。部屋から出た事なかったのに?」

「うっ」


 レニちゃんって馬鹿っぽいのにとんでもなく鋭い所突いて来る。

 ちょっと見直しちゃった。


「なんて冗談よ。ここね、国王陛下が考案したの。温泉宿が欲しいって我儘言ってね」

「へ、へぇ~……」

「なによ、信じてないの?」

「ううん、信じてる信じてる、連れて来てくれてありがとうね、部屋から出るのもだけど外出できるなんて夢みたい」


 レニちゃんは話し相手として、常に近くに居るようにしてくれてる。彼女なりの気遣いが身に染みます。

 アレクも同じように傍にいるから、監視されてる可能性もあるけど。

 ちなみにリリィはゲームコーナーで遊んでいてテンションがおかしな事になってる。


 それより国王陛下ですよ。つまりは陛下も転生者って事よね?

 後で、アレクに聞いてみるしかないね。

 もし陛下が主人公なら『乙女ゲームの世界に転生しましたが王様でした。部外者で辛いです。儂がもし10年若ければ』ってタイトルになっちゃうのかな。

 う~ん、ストーリの途中で本当に若返って本来のヒロインを口説きそう。

 でも、それが面白いかどうかが問題ね。

 というか、陛下の中身が気になる。元温泉経営者だったりして?しかも推定年齢45歳。独身!主人公としては辛いね、あと20歳若返って欲しい。


 まって!殿下はどうなの?15才くらい?男子だよね。でも、乙女ゲームをプレイする男子…?ダメじゃないけど。

 う~ん、聞いてみたいような、怖いような。

 その後、レニちゃんが少し席を外したタイミングでその機会が訪れた。


「という訳なんだけど、アレクって生前は何歳くらいの男子だったの?」

「はは、女性に年齢聞くのは失礼だよ?」


 えーマジですか。


「そういえばなんだけど、第五王子っていないみたいだけど、どうしてなの?」

「あーそれはね──」


 この国、王位継承権順でナンバリングされ、第五は王女だそうです。

 ついでで本編中に出てくる六人の王子を簡単に紹介された。

 何事も完璧にこなす策略家ゼスラント第一王子、民衆から絶大な人気のカリスマ、アデルラント第二王子、超人的な身体能力のエレンラント第四王子、元気なショタポジのミルセント第六王子、さらに外国勢二人が、軍事大国の堅物ヴァルレイ王子、砂漠国は褐色肌で色気漂うセン王子。

 寡黙な研究家のクリムラント第三王子と第四王子は前日譚に登場しているから私も知ってる。


 ミルセント第六王子とアレクは双子で、第五王女と同じ母親、陛下が再婚後に生まれたって事で、その為あまり立場が強くない。

 上位貴族界ではさほど影響力が強くなく、貴族界では弱くもない、丁度いい相手としてアレクは私なんかに声を掛けて来た。

 あまり知りたくない裏事情だけど、それならそれでもっと都合のいい子はいくらでも居る。レニちゃんとかお勧めなのにと思いつつ、そのあたりを聞いてみた。それはもう面倒な彼女みたいな聞き方でね。


「僕の場合、同郷ってのが大きいかな、……仲良くしてもらえるなら別に友達の関係でもいいんだけど、会う理由が欲しかったのもあるかな?」


 アレクの表情や言い方には少し変な感じがした。

 それは既に結婚を意識していない、まるで何かの事情を抱え、遠回しの言い訳をし、本心ではないと言ってるように聞こえる。

 もしかして、意中の人が出来ちゃったのかなぁ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る