2023/04/07 入学式

悩みに悩んで選んだ焦げ茶色のローファー


紺色のソックス


紺地に赤チェックのスカートは

桜が動くたびにひらりと翻る


丸襟の白いブラウス襟元にリボン


金のボタンが光る紺のブレザー


ロングの髪は結ばないことにした


片方を耳にかけ、前髪を整える


革の通学鞄を肩にかけ


最後に

ボタンに刻まれた『桜の紋章』を指でなぞる


      

      「行ってきまーす」


玄関を出ると暖かい陽射しが桜を包む


胸いっぱいに春の香りを吸い込んだ桜の背後からいつもの声が聞こえた


「さーくら、おはよー」


とりあえず聞こえないふり


「さくらーーー!!」


くふふ、声デカ


「あっやっぱりね、わざと無視したな~」


薫がそう言いながら桜の肩を引き寄せた


「おはよー薫、、ねぇあれ片岡かな?」


桜は前方に片岡らしき男子をみつけた


「かたおかー!おはよー!」


薫は先ほどよりもさらに大きな声をだした


片岡は前を向いたまま右手をあげる


「もぉ~待ってよーかたおかー」


薫は桜の手を引いて走り出した


その勢いで近くを歩く男子学生に

桜の肩が当たる


「あっすいません、、

   ちょっと薫、走るのやだよぉ」


周囲の目が自然と2人に注がれた

桜は目立つのがあまり得意じゃないが

薫といると勝手に目立ってしまうのだ。



片岡に追いつき

肩を並べて桜ヶ丘高校の入学式へ向かう。


春の風が3人の背中をそっと押す



   いよいよ高校生活の始まりだ


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