イジメなんかじゃない、教育的指導。

 人間にはランクってものがある。

 それはテストの点とか何か特技があるとか何かで賞取ったとか、そういうデータにできるようなものじゃなくて、だけど誰だって一目見ればすぐにわかるものなんだ。

 いつも0点取ってるような馬鹿なゴミクズでさえ、こいつは自分より上とか下とか、絶対に間違う事はあり得ない。


 上の人間はいくら目立っても良い。いや、むしろ徹底して目立つことは、あたしみたいな上の人間にとって高貴なる義務ノブリスオブリージュであると言ってもいいくらい。

 ファッションや髪型は徹底的に凝らなきゃいけない。みんなが憧れて真似したくなるように。

 いつだってみんなが感心するようなカッコいい台詞をその場その場でキメてやって「すごい! 深い!! カッコいい!!!」って言わせなきゃいけない。

 歌もダンスも、いつだって披露できるように練習は怠らない。常にみんなの期待に応えられるよう準備しておかなくちゃ。

 それこそ下のゴミクズどもの嫉妬と憧れを一身に集めるものの高貴なる義務ノブリスオブリージュってやつだ。


 その代わり、上の人間は教室でいくら大きな声で話してもOK。でっかい声で笑うものOK。行事の時にどんなにふざけてもOK。ムカつく奴を下の奴らに潰させてもOK。

 どんなことをしても上の人間のやることならOK。だって存在そのものが正義なんだもの。したいことをしたいようにやって何が悪い。

 上の人間のやることにイチャモンつけて悪いと言う奴こそが許されざる絶対悪なのだ。


 下の奴が目立つのはハッキリ言って犯罪だ。

 下のやつが服や髪型にこだわってもキモいだけだし、人前で堂々と笑ったり話したりなんて身の程知らずな行いに出るのは公害でしかない。

 上の人間の邪魔にならないよう、気分を悪くさせないよう、大きな声を出さないように、人目につかないように。

 常にビクビク怯えながら細心の注意を払うのが奴らの最低限の義務ってもんだ。

 そしてあたしみたいな上の人間がいつだっていい気分でいられるよう、全力で心を配って誠心誠意尽くす事だけが、下の連中に赦された生きる道なんだ。


 そんなゴミクズがテストで満点とったとか何かのコンクールで賞取ったとか、そんなものに何の価値がある。むしろお前らみたいなゴミクズが人前で表彰されるなんて、そんな資格がないって当たり前の事すら理解できない馬鹿だと自分から言ってるようなもんだ。

 お前らが他人様の目に留まって良い訳がない。身の程知らずにもそんな大罪を犯しておいて、ドヤ顔するなんて万死に値するっ!!


 もしまともな人間扱いされたければ、努力して上の人間になってからにしろ。

 あたしみたいに生まれつき選ばれた人間だけが血の滲むような努力をしてはじめて上になれるんだ。

 うちら上の人間と、お前らみたいな下のゴミクズでは、生まれた時から人生の価値ってものが違うんだ。

 そこんとこ勘違いしてる奴は生きてる資格がない。


 それなのにそんな当たり前のことすら全然理解できないクソほどの価値もないゴミクズがたまにいる。

 ド底辺のクズがいきがって、身の程わきまえずに言いたい事を言う。

 キモイ奴は何を言っても正しくならないって当たり前の事がわからない。

 正しい事って言うのは上の人間が言うから正しくなるんだ。

 お前らが口にして赦されるのは「さすが」「知らなかった」「すごいね」「センスいい」「そうなんだ」のさしすせそだけ。どうしてそんな常識もわからないんだろう。


「それ、おかしいよ。ネットの陰謀論そのまんま」


「ちょっとやりすぎじゃない?ムカついたからって何を言ってもやっても許されるとでも思ってるの?」


 せっかくみんなが一体になって盛り上がっている時に、イミフな正論振りかざして空気を台無しにしやがる救いようのない馬鹿。当然みんな白けるんだけど、空気が読めないからそんなもの全然気にしない。


 上の人間であるこのあたしがムカついてるんだ。何を言ってもやっても許されるに決まってるじゃないか。なんでそんな常識もわからないんだ。


 そんな自己中の頭の悪いゴミクズが集団の和を乱すせいで、せっかくの秩序をめちゃくちゃになってしまう。

 クソほどの価値もない、害悪にしかならない馬鹿にはしっかり教育して身の程をわきまえさせてやるのが親切ってものだ。


 それでもわからないほど頭が悪い奴は、人生って舞台から退場してもらうしかないだろう。

 それが世のため人のため。集団の和を守り、秩序を維持するため。

 あたしみたいな生まれついての上の人間がゴミクズみたいな下の連中のためにしてやるべき高貴なる義務ノブリスオブリージュってもんだろう。

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