深夜のお供〜カップ麺のポテンシャル〜

夜中に食べても罪悪感がなく、満足で穏やかな気持ちになれる食べ物とはなんだろう――。


個人的には「重量の軽い食べ物」がいいと思う。食べ物なんてのは、基本的には重量で判断すればいい。野菜や果物をどれほど食べても太らないのは、重さのうち90%以上が水分でできているからにほかならない。極端な例で考えると、青果物を1キロ食べたとしても、900グラムは水分なので体外へ排出される。よって、野菜や果物をどれだけ大量に食べたとて、絶対に太らない。


さらには米も同じだ。米粒の水分量は15%程度だが、炊飯したご飯の水分は60%、炭水化物が37.1%、たんぱく質2.5%、脂質0.3%という配分になる(農林水産省「消費者の部屋」より)。つまり、米だけをバクバク食べてブクブク太るというのは想像しがたい。間違いなく、その他に食べ物を口にしているから太るというだけで。米を米だけで食べてみろ、太るはずがない。



ということで、調理器具はおろか食材の備蓄もない我が家で、深夜に腹が減った場合に口にすることができるのは、床に転がっているサツマイモかジャガイモ、または柑橘類くらいだ。


だがサツマイモとジャガイモは、電子レンジの「オーブン」で50分ほど熱しなければならないし、柑橘類は剥くのに手間がかかるし指が痛くなる。どちらもすぐに食べることができないため、小腹の減った深夜の食事としてはふさわしくない。



乞食のごとくガサゴソとキッチンの奥を漁る。すると懐かしい形状の食品容器を発見。そう、即席カップめんだ。賞味期限が一年も過ぎているが、こういうものはいつだって食べられる。そもそも乾燥しているのだから、腐ることもカビが生えることも滅多にない。


さっそくティファールで湯を沸かすと、容器へ注いで1分半ほど待機。3分じゃないのか?わたしは硬い麺が好みのため、カップ麺は1分半から2分で食べるように心掛けているのだ。



こうして出来上がった賞味期限一年落ちのカップヌードルで、小腹を満たすことに成功した。



ふとパッケージを見ると「高たんぱく&低糖質」と書かれている。たんぱく質15gに糖質50%オフ、さらにカロリーは274キロカロリーしかない。そして何よりも興味をひかれたのは、


「ハイプロテイン謎肉」


という文字だった。ハイプロテインは文字通り高たんぱくを意味するのだろうが、謎肉ってなんだよ!・・・おっと失礼。謎肉こそ誰しもが想像に難くない、あの四角い乾燥肉のことだろう。謎肉の材料は豚肉と大豆で、それをフリーズドライさせたキューブがカップ麺に乗っかっている。


そして、あの謎肉よりもさらにたんぱく質を多く含んだ個体こそが、ハイプロテイン謎肉ということらしい。


「いつもよりもさらに肉肉しい味わいをお楽しみください」


天下の日清食品イチオシとあれば、肉肉しい謎肉を楽しまないわけにはいくまい。普段はペッと吐き出すわたしだが、この一文を読んでしまったからには食べるしかない。小さなグレーのサイコロをモグモグと噛みしめる。


(・・・前ほどまずくない)


わたしの記憶にある謎肉はマズい。吐き捨てるにふさわしいほどのマズさだったはず。だがこの謎肉は決してマズくはない。もちろん美味くはないが、マズくもない。


――日清食品さんよ、アンタ、やるねぇ。



久々のカップ麺、あっという間にスープまで完食。胃袋も脳みそも、ついでに心まで満たされてたったの274キロカロリー。うん、わるくない。


自論だが、小腹を満たすには温かい食べ物が効果的。冷たいもの、たとえばフルーツなど、いくらでも食べることができる反面、水腹で一杯になった後の虚しさが半端ない。


パンやスナックも満腹にはなるが、パサパサした軽い食べ物は圧倒的な虚無感に襲われるだけで、満足は得られない。



そう、たとえ物理的に空腹が満たされたとしても「虚しさ」が残るようでは意味がないのだ。



その点、温かい食べ物かつ水分を含んでいると満足度は高い。焼きたてのサツマイモやジャガイモ、そして今回のカップ麺などがこれに該当する。


「深夜だし、太っちゃう」


バカか。深夜に何を食おうが、それだけで太ることなど断じてあり得ない。日頃から暴飲暴食をしているからこそ、おまえは太っているだけだ。一食や二食抜いたところで体重の変動がないように、夜中にカップ麺を食べようが太ることなどない。


そもそも一般人が言う「太った」「痩せた」はすべて、水分が溜まってむくんでいるか、逆にうまく排出できたかの違いでしかない。普通の身体ならば、そんな簡単に太りも痩せもしないということを、頭に叩き込んでおくことだ。



・・・というわけで、賞味期限切れのカップ麺が大量に見つかったので、その処理に徹しつつ丑三つ時を過ごすとしよう。

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