第5話 共栄

 翌日。木曜日。

 桃花はいつものようにルークスに寄って、

2番テーブルに座った。

 バイトのお姉さんが、休みのようだった。


 「いらっしゃいませ。昨日は楽しかったです」

 前回の笑顔とは違う笑顔を見せながら、

三沢純が水とおしぼりを運んできた。


 「こんにちは。バニラのタルトとデミタスで」

 「かしこまりました」


 バニラのタルトとデミタスをトレイに乗せて

三沢純が桃花の座っている2番テーブルに運んで、

桃花の前にコーヒー、ケーキの順に静かに置いた。


 「来週の火曜の夜、外で食事をしませんか」

 「いいですよ」

 「それでは、詳細はこちらで。メッセージ待ってます」

 三沢純は、自分の携帯電話の番号が

書かれているメモを桃花に手渡した。


     ◇ ◇ ◇


 三沢純はアパートを引き払い、

桃花のタワーマンションで同棲したのち、

3年後、2人は結婚した。


 資産家の橘家は、三沢の作るケーキを好み、

惜しみなくパティスリーに投資した。


 パティスリー『ルークス』は新装開店をした。

 店名も次のように変えた。

『prosperite mutuelle(プロスぺリテミュチュエレ)』

 この店名はフランス語で『共栄』という意味だ。


 2人は美味しいケーキを開発し、美味しく食べつつ、

世間に貢献し、愛し愛され、いつまでも幸せに暮らした。


         ━完━

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ご令嬢の推しは、独身パティシエ 冨平新 @hudairashin

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