推し活忍法帖

夏川冬道

第1話

詳しい経緯省くが藤林四葉は生前プレイしていた学 園もの乙女ゲーム『戦国ハリケーン』によく似た世界に転生した。

 戦国ハリケーンは戦国武将の魂が現代に転生したイケメンと恋愛するというドタバタラブコメであった。当然、四葉は戦国ハリケーンの舞台の学園の生徒であり、四葉の推し活になんの支障はなかった。


「三成くん……今日もかわいい……」

 ただいま四葉は気配を消しながら前世の推しである石田三成を見守っていた。石田三成は主人公ちゃんの健気な後輩キャラで生徒会役員である。四葉は生徒会の仕事で忙しい三成を邪魔しないように隠密に見守っていた。これも推し活の一環である。それに三成を危険から守るというい意味合いもある。四葉は三成の周囲を警戒していた。

「ムッ、殺気!」

 四葉は反射的に身を翻していた。その瞬間、矢文が突き刺さった!

 四葉はおそるおそる矢文の内容を読んでみた。

「これは果たし状!」

 矢文の差出人は学園一のワル、蒲生氏郷であり、藤林四葉に向けて屋上で待つとのことであった。

「身にふりかかる火の粉は払わなければならない!」

 石田三成のことを置いて一旦学園の屋上に向かうことになった。


◆◆◆◆◆


 ――学園の屋上。

 屋上は荒涼とした風が吹いておりいかにも学園の不良の溜り場といった風情であった。藤林四葉は屋上で不良の刺すような視線にさらされていた。対峙する蒲生氏郷は身長2メートル強はある巨漢であった。

「藤林四葉……貴様が三成きゅんの周囲でうろちょろしてることはわかってるんだ……三成きゅんから大人しく離れろ……さもなければ痛い目にあわせるぞ」

「私は三成くんを邪魔しないように見守っていただけ、お前のように欲望に満ちた視線で見ていない!」

 蒲生氏郷の脅しに四葉は毅然とした態度で言い返した。

「くっ、言わせておけば!おい、テメェら!藤林四葉をギッタンギッタンにしてやろうぜ」

「「「アイアイサー!」」」

 氏郷の呼び声に応じ不良軍団が一瞬で四葉は取り囲まれる! これはピンチだ!

「グフフ……よく見たら可愛い顔してるじゃねえか……その顔を酷い目にしてやるぜ」

 下卑た視線で四葉を見る不良生徒!

 しかし、四葉は不敵に笑った!そして懐から何かを取り出して投げつけた!

「ウワーッ! 煙幕だ!」

 突然の煙幕に混乱する不良軍団! そして煙幕が晴れるとそこには四葉の姿はなかった!

「アッ!消えた! どこに逃げやがった!」

 不良軍団は四葉の行方を探した!

「ここだよ!」

 そこに四葉の声が高らかに響き渡った!

「アッ……あんなところに!」

 不良軍団の視点の先、貯水塔の上に立つ忍装束の影!

「伊賀上忍……藤林四葉、推して参る!」

「なんだと……野郎どもやっちまえ!」

 困惑する蒲生氏郷を尻目に四葉は貯水塔から飛び降りる!

「一気に片付けるよ! 伊賀忍法嵐兵児!」

 四葉が忍法を唱えると荒れ狂うタイガーの幻影が出現!不良集団を蹂躙する!

「「「ウワーッ」」」

 不良集団はまとめて吹き飛ばされた! 所詮は弱兵!

「クソっ!使えない部下どもだ!」

 氏郷は吐き捨てるように不良軍団を見下ろすと気合を入れた!すると2メートル強はある氏郷の学ランは音を立てて破れ、恐るべき筋肉の鎧が浮かび上がった!

「かかってこい! 藤林四葉!」

 氏郷は四葉を挑発すると体全体から闘気を放出した!

「禁断の秘技! ボールブレイカー!」

「ウギャーッ!」

 四葉は間髪入れずにボールブレイカーを氏郷に叩き込んだ! 氏郷は悶絶ノックアウト!

「悪は滅びた……」

 悶絶失神する氏郷を背にして四葉は屋上を後にした。


◆◆◆◆◆


ーー学園内の薄暗い教室。

「秀忠様、蒲生氏郷がやられました」

 秘書風の女が秀忠と呼ばれた男に蒲生氏郷が敗北を報告する。

「!」

 秀忠は無言で軍配を投擲!テーブルに置いてあった林檎を切断した!

「所詮蒲生氏郷は力頼みの小物……生徒会壊滅作戦の捨て駒に過ぎない」

 そう吐き捨てると秀忠は高笑いした!

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推し活忍法帖 夏川冬道 @orangesodafloat

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