第48話 お話

僕の経歴を小町ちゃんが話した途端に、ペコペコ頭を下げてきた。

「はい、なんでしょう。黒宮さん」

 先ほどと同じ人物とは思えない。舐め腐っていた表情も、三下キャラに早変わり。この子は見栄を気にするタイプか。後々苦労するぞ。

「いや、僕と同じような役割だから、お互いのことを知っていた方が、連携をとりやすいと思ってるんだが‥‥‥‥」

「はいはい、なるほど。まずは能力の紹介からさせてもらいます」

 先ほどまでと同じ人物なのかと疑うほどに大人しい。

「私の能力は‥‥」

 そういうと、杏奈さんは右手に一本の槍を生み出した。何もない空間から、一本の白い槍を作り出した。

「この通りです。はい」

 その後も、溢れるほどの槍を作り出す。なるほど、武器を作る系の能力。しかも、この調子じゃ無尽蔵ときたものだ。とんだチート野郎だな。

 だが、槍を作り出すだけでは、ダンジョンを攻略することはできない。無尽蔵の武器だけじゃあ、モンスターを倒すことはできない。せめて、身体能力を強化する程度にならなきゃ……

「さらに、槍を持っている最中、身体能力が上がります」

 あっ、ふーん。あーー、当たりの能力ですね、これは強い。槍を持っている間と言っても、槍は使い物になっても新しいものを生み出せばいいこと、どれほどまで身体能力が上がるのかはわからないが、若くして本部まで呼ばれる実力。強いな、こいつ。

「基本的に槍をメインとした戦闘スタイル。主に中距離を担当しますけど、近距離も遠距離もいけます」

 槍、この大きさだと、ギリギリ小さなダンジョンに引っかからないぐらいか。僕と同じ距離のアタッカー。

「へぇ、黒宮さん。こんな感じでどうでしょうか」

 三下キャラが似合うのこいつ。すごいゴマを擦ってる。その様子を見た小町ちゃんは少し不満げな様子を抱いてる。

「一回槍を出してくれない」

「承知」と言うと同時に手元に槍が生成される。

 思っているより重たい。完全に身体能力で強化されること前提の武器だな。振り回すにしては僕の筋力では足りなさそう。

「なるほど、だいたいわかった。そうだな、今回は杏奈さんが前に出てくれ」

「あっ、杏奈と呼び捨てにして構わないです」

「りょうかい。で、基本的に襲ってくるモンスターは杏奈が処理してくれ。前に誰もいない方が槍を振り回しやすいだろ。残ったモンスター、処理しきれないモンスターは僕が受け持つから」

 杏奈は、わかりました、と言う。

「そういや、聞いてなかったんですけど、黒宮さんの能力はなんですか?」

「僕の能力か?僕の能力は‥‥‥‥」

 僕はそういうと、足元にある影を床に突き刺した。現実に違和感のある光景が目の前に起こる。厚みも質量もない、ただの闇が、ただ、そこにある。

 間近で見たことがなかったのか、案山子さんも一緒に驚いている。

「こうやって、触れた闇を操ることのできる」


 そんな能力持ってたら強いですよ、とボソリと杏奈は言った。

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