詩集 カフェイン・シチュエーション

小林素顔

午前五時 コーヒー

目覚めのコーヒーは飲み干すもの

世情とともに その苦みを受け入れること

砂糖もミルクも入れまい

カップに満たされた闇を啜り尽くして

ニュースから目を逸らすまいと

寝ぼけた血流を急かすこと


ネルドリップの時間は無い

起き抜けの甘えに鞭打たなければならない

インスタントでなければなるまい

早急に仕事に向かって

挨拶 忖度 指示 謝罪 と

たぐる人と人の心の糸


そのカップの闇に光るものは星ではない

電灯 LED 道標ではなく労働

黒の水面に息を吹きかけ

喉の火傷ごと飲み干して

働かなければなるまい

カップの底の渋を見つめて

世界を救うことは出来ないと

唇を噛む 蚊帳の外

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