7 【ふとう】~【ふにんき】

「きたー!」

 辞書を開いてそのページが目に入った瞬間、思わずガッツポーズをしてしまった。

「狙い通り! 船盛り! 船盛り!」

 いろいろ考えた結果、食材と共に資材が手に入る食品が船盛だった。そして目の前に、立派な小さな船と多くのきらびやかな刺身が現れる。

「わかってるじゃーん。うまそうだ」

 最初は刺身に気持ちが惹かれたが、次第に船の方が気になりだした。こんなに完全な形の船を見るのは久しぶりだ。もちろん乗るには小さすぎるが、資材としてはかなりの量である。しかも、構造的な参考にもなりそうだった。これの何倍のものかを作れれば、出航もできるだろう。

 ただ、残念ながら同じものは一度しか手に入らない。

「なんかほかに……船板! 船荷

 さすがにそう都合よくは出してくれなかった。あと、「船虫」と「腐肉」は出てきても困ると思い口には出さなかった。

 海水から作っておいた塩で、刺身をいただく。幸せだが、消えていく幸せと思うと少し寂しかった。



本日の辞書めし

・船盛り(塩)



 船を見ていると、漁のことを思い出す。もちろんここでも魚はとれるが、そういうことじゃない。あの、狙いを定めて漁場に行き、狙い通りに釣り上げる時の快感。そういうものが、ここにはない。

 漂流と言うアンラッキーと、無人島に着けて、そこで不思議な辞書を手に入れたというラッキー。どちらが大きいのだろうか。

 目の前の海には、一艘の船も浮かんでいない。もったいないな、と思った。

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