5 【きさき】~【きじゅん】

 火をつけて、お湯を沸かす。とりあえず何が来ても煮るか焼くかなので、火の準備はしておいた方がいいと考えた。

 さて、今日は何が来るかな。辞書を開ける。

「雉! うまいのかな」

 目の前に鳥が一羽。魚は得意だが鳥は扱ったことがない。

「生地の方が手に入ったらなあ。擬餌は……あったら便利だけど俺は食いつかないしなあ」

 今日は雉だけだった。

 そして、途方に暮れたので、串に刺してそのまま火にかける。



本日の辞書めし

・雉の丸焼き



 雉が焼けるまでの間、別の料理も準備する。金庫に海水を入れ、そこに砂と木片を入れる。気がおかしくなったのではない、ちゃんとした料理である。



本日の辞書じゃないめし

・砂と木片のスープ



 焼きあがった雉にかぶりつき、心を決めてスープを飲む。不味い。じゃりじゃりする。とても食い物とは思えなかったが、気持ち辞書に向かってアピールする。

「なんか俺、砂とか木も食っちゃうなあ。これも食い物だなあ」

 そう、俺の作戦は「いろいろと食いもの扱いにして辞書に出してもらおう」というものである。成功するかわからないが、とにかくチャレンジしてみないことには、この島で凍え死ぬか栄養が偏ったなんかの病気で死んでしまうだろう。

 とはいえ、腹が痛くなってきたな……

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