世界設定その8 ファリス帝国


主人公ソルジェにとって最大の敵がファリス帝国です。

ガルーナ王国を裏切ったかつての同盟国。

9年前はファリス王国でしたが、5年前からファリス帝国を名乗っています。

皇帝ユアンダートが率いるこの国家は、どんな国なのでしょうか?

設定をご紹介していきます!




・概要

ファリス帝国は大陸東部に位置する国でした。東の大海に面した沿岸地域では古くから漁業、海運が盛んに行われてきました。

豊かな穀倉地帯を有しているのも特徴です。経済的に大昔から優位性を誇っていた大国であり、文化、軍事、商業のあらゆる面で質が高く優秀さを持ちます。


北方諸国や東方の諸島国家群に比べると明らかに文明の度合いが高く、大陸を制覇するだけの可能性を十分に有していました。


政治・軍事手腕に長けたユアンダートの登場により、周辺国家への侵略戦争を盛んに行うようになりました。


ファリスに代々仕えて来た有能な将軍たちが大勢いたこと、軍事的な功績を上げれば身分を問わず出世が可能であり兵士のモチベーションが高かったこと、経済的な豊かさを使い大勢の傭兵を雇えたこと、吸収した国家の貴族や騎士に重要ポジションへの就任を拒まなかったこと、人間族絶対優位を唱えマジョリティの種族である人間族の支持を集めたことなど……ファリスが領土的野心を叶えるための動力は複数ありました。


現在、大陸のほとんど全てを支配下においた状態として物語はスタートします。


世界最大の帝国であり、人間族第一主義を唱える人間族の国家、それがファリス帝国です。




・環境

帝国となった現在は大陸の全土が領土になります。

元々のファリス王国の領土は、豊かな穀倉地帯と多くの港湾都市を持ち、一年間を通しておだやかな気候に恵まれた土地になります。


災害なども少ない土地でり、発展するに適した環境です。


国土の岩盤も硬さが少ないため古くから運河の開発、延長工事も盛んに行われてきました(大陸には古くから数多くの運河があります。1000年前から各地で自発的に整備が成されています。)。


いくつかの伝統的な運河を再建、接続工事を行って来たのも世代を超えたファリスの仕事の一つです。それが発展を呼び、ファリスの古い貴族たちの大きな資金源となりました。


侵略戦争も盛んですが、開拓事業に対しても投資を惜しみません。

拓きやすく領地を広げていきやすい環境でしたが、過度な繁栄により農地は塩害の蓄積が始まっており疲弊しつつあります。


開発の結果および人口増加に伴う燃料の需要激増の結果として、森林の伐採が過度に進みつつあります。北海貿易を安定させるために、北海に海軍を新設したことも、森林資源の減少に拍車をかけています。



・政治

王制→帝政になりました。巨大な領土を運営するためにユアンダートは強権を発動することも少なくはありませんが、基本的には多くの貴族議員から成る議会で立法が成されています。


巨大過ぎる帝国の国内勢力は混沌としており、ユアンダートが与える侵略戦争での利益やカリスマ性が諸勢力のバランスを取ることに大きく寄与しています。


真正の実力主義も特徴です。当然ながら『個人の能力』も高く評価されますが、これに『身分』や『受け継いだ財力』といった本人自身に由来しなくとも本人が結果的に所有している力も評価されます。


天才的な人材でなければ、貴族や富豪の子息に出世競争で勝つことは難しい仕組みになっています。

結果、天才的に有能な人材(帝国の仕組みにチャンスを与えられたのユアンダートへの忠誠も高い)、金持ち(ユアンダートの政策をまず間違いなく支持する)、有力貴族(ユアンダートへの忠誠が高いとは言えず不満も持っている※新興勢力にユアンダートが力を与えるため自分たちの権力や地位が損なわれていると感じています)が国家運営の中心を担う人材です。


ユアンダートが提唱する人間族第一主義もファリス帝国の特徴です。

人間族をとにかく優遇する政策であり、亜人種の奴隷化や亜人種の財産の没収などを積極的に行っています。


人間族からすればメリットが多く、ユアンダートとファリス帝国の支持につながってもいるのです。



※宗教

ユアンダートは慈愛の女神イースを国教に選びました。

このことによりイース教指導者を味方につけるとともに、信者たちからの支持を集め、帝国内勢力の安定化を画策してもいます。


個人的な理由でイース教を好ましいとも考えているのですが、政治的・組織学的な利用もしているのは事実です。


※文化面

伝統的に写実的・現実的な芸術を好んでいましたが、ユアンダートの父親の時代から権力掌握のための芸術のプロパガンダ利用も進んでいます。

演劇や書籍などで帝国軍や騎士の活躍を宣伝しています。


権力者の美化という傾向が表れていて、美化された彫像や絵画などを描くことが主流となっています。伝統的には写実性が高いことを尊んでいました(しわなどもリアルに描写する絵画を好んでいました)が、今では芸術もプロパガンダとして使いこなしています。



・軍事

『十大遠征師団※ソルジェたちからすれば『侵略師団』と呼ばれます』を持っています。


十人の有能な将軍たちが率いる、十組織に分かれた巨大な軍勢たち。帝国貴族や、傭兵、吸収された国家の軍人や貴族などがそれぞれの将軍です。


実力で選ばれた猛者たちであり、この十大師団を完成させたことが領土拡大戦争を成功させた最大の理由になります。


十大師団の兵士に選ばれることは軍人としては明らかに出世コースであり、十大師団入りを目指す若者が多いことも、十大師団の質を高く維持することに貢献しています。


エリート兵士と、軍事的な才覚を持つ将軍によって構成された最強の軍勢、それが帝国軍十大師団になのです。



なお帝国軍は、十大師団のほかにも多くの軍事力を有しています。


・帝国海軍。北海に建設された海軍です。北海を使った侵略および海運の護衛・確保を行います。建設の名目の一つには、バルモア連邦に対する圧力を形成することがありました。

前身となる部隊は、バルモア連邦内での頻発していた小規模な反乱、犯罪組織などが企画した海賊行為の取り締まりをしていたファリスの海上戦力部隊です。


・国境警備隊系組織、十大師団のように侵攻が目的の組織ではなく、すでに領土とした土地を占領、外敵から防衛する組織も各地にあります。

ユアンダートに才能を認められた軍人や騎士、貴族などがそれらの軍勢のリーダーに就任することが多いため、十大師団にも勝るとも劣らない戦力があります。


組織の性質上、それほど移動することもないため、拠点を防御力の向上に使えもします。それもまた兵士の質で劣ったとしても、十大師団にはない大きな軍事的アドバンテージになっているのです。


こういった軍のリーダーは、派遣されている地域の政治・経済の支配者になることも多く、十大師団の将軍たちのように戦場での力よりも、統治力、内政の力などが問われもします。


地域を自分の軍勢に有利なように法整備することもあるため、それもまた軍事力の強さとして機能することもあれば、欲望に走った末に貧弱化することさえもあります。



・『暗殺騎士団/アサシン』、おもにバルモア連邦内の武術の達人からなる暗殺任務や破壊工作を行う集団です。ユアンダートへの忠誠心はそれほどありません。


・旧バルモア連邦軍、解体され帝国軍に吸収されています。古くからのファリス王国系貴族や商人たちから目の敵にされていて、過酷な任務を強いられています。忠誠心はありませんが、若い兵士たちには選択肢もないため実直に働いてはいます。



・『帝国軍の諜報機関/帝国軍のスパイ』、公式な名前が存在しておらず、半ば自然発生的に作られた親ユアンダートを掲げる組織です。

特殊な戦闘能力や才能を有した者が数多くいて、帝国軍の任務を陰ながらフォローしています。


諜報機関の特性として独自の組織哲学を有しやすく、帝国軍のスパイもまた例外には漏れず自分たちの政治的理想を持っています。


世間一般からは忌避される能力者も数多く在籍しているため、帝国軍のスパイは自分たちや家族の平穏がユアンダートの権力によって保障された『不可侵の安全地帯/ヘイブン』の設立を目指しています。


忠誠心の在り処は、ユアンダートの権力です。ユアンダートの権力を守るためなら政的を暗殺することも厭いませんが、それはユアンダート自身に惚れこんでいるわけではなく、あくまでも彼の権力に忠誠を誓っているだけなのです。



・異端審問官

帝国軍所属ではありませんが、ユアンダートと一部のイース教会強硬派勢力との結託により運用されている軍事力や調査能力を持つ人々です。

『カール・メアー』と呼ばれるイース教原理主義勢力が主体となり、巫女戦士が尋問にあたります。


主な任務は『血狩り』と呼ばれる亜人種族との混血である者、『狭間』を帝国軍内部に発見して処刑していくことです。


一部の原理主義者たちからすれば、人間族の支配する世界において亜人種が生存し続けていること自体が哀れなことです。慈悲の一環として、亜人種や『狭間』を処刑すべきという狂気を体現する人々になります。


処刑されなくても、政治的な運用をされれば誰でも失脚させられるかもしれません(亜人種の血の有無を調べる検査で不正を行えば操作は容易いのです)、そのため政治的な圧力として彼女たちは露骨なまでに機能します。


ユアンダートからすれば、亜人種を排除しながら、反抗的な態度を軍人たちが取るのを防ぐ効果もあります。ファリス王国時代は貴族と亜人種との婚姻もそこそこ行われていたため、実際はどこに亜人種の血を引く貴族がいてもおかしくはありません。


一般的に『狭間』は嫌悪される立場にありますが、貴族の子であれば守られて行きます。『狭間』と人間族のあいだに生まれた子は、より人間族の見た目をしているため、数代前に亜人種の血が混ざっていたとしても貴族自身が知らないこともありえます。『狭間』であることは社会的な不利を招くため、あえて告げることをしないこともあったからです。


政治的に邪魔な貴族への圧力をかける道具としても、『血狩り』を行う異端審問官は使えるのです。



・帝国軍全般の特質

規律が高く維持されているのも特徴です。

訓練の質も高く、装備も潤沢、給料も良く兵站も完璧です。大陸内のあらゆる軍事組織に比べて、ちゃんとした組織でもあります。


かつては亜人種の戦士も多く抱えていましたが、今では亜人種の戦士を雇うことはなく、巨人族などの奴隷化した戦士が一部いるだけになっています。


そのため軍事力の質は亜人種が参加していた頃の方が強く、人間族第一主義が強く意識されるほどに弱体化しつつあります。


また長年に渡る侵略戦争の結果、戦線は拡大しすぎているため、かつてよりも増大したランニングコストが軍全体を圧迫してもいます。


軍人の中にも政治力・経済力を持つ者たちが現れているので、これもまた古株であるファリス王国系貴族からすれば新興の政治的ライバルとなり、内部対立の火種になっています。


兵士の高齢化と疲弊、組織継承も課題となっています。


帝国軍は進化し続けた結果、高度な軍事運用を体現していますが、これを行うためには上質な人材が一定割合いることが前提になっていきます。


進歩して向上し洗練したシステムを、経験値の乏しい若手が使いこなせるとは限りません。

より簡略化・合理化しようとすることで、真の完成度からは劣っていく流れとなっています。


合理化した結果、ソルジェのような賢くないタイプの主人公にも経験と洞察力で行動を読まれてしまうのです。




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