咖喱夜話について

 先述の『咖喱夜話』について特に求められたわけでもありませんが何点か補足します。


 当時大学3回生だった私は、ある日、所属する日本史研究室の助教授から随筆集というか研究室の会誌(?)のようなものへ寄稿を求められました。


 それは年に1度発行されるもので、各学年で2人ほど選ばれた学生と教授が寄稿した文章から成るものでした。


 3回生の中から執筆者として選ばれた私は、なにを書いたらいいのか分からず、助教に尋ねたところ「なんでもいい」という大変有難なんの役にも立たないいお言葉アドバイスをいただきました。


 窮した私は、参考に前年の会誌を見ました。


 そこで飛び込んできたのは前年の執筆者である同回生T君の文章でした。


 驚くべきことに、T君は彼が熱狂的ファンである中日ドラゴンズの低迷を嘆き激励する文章を寄稿していました。題して『失墜した竜』。


——やりやがった……!!


 私はT君の蛮行に恐れおののきました。


 いくら「なんでもいい」と言われたとしても趣味全開の文章を日本史研究室の編纂物に寄稿する行為、これを蛮行と言わずしてなにを言うのでしょうか。


――俺もやらねばならぬ


 同回生が前年かましている以上、私もどでかいのをかまさねばならぬ!!


 そういった謎の義務感に駆られて書いたのが『咖喱夜話」なのです。


 実体験を交えつつもかなりの割合で出鱈目を詰め込んで完成した『咖喱夜話』は研究室内や友人の間である程度はウケた、と自負しています。スベッていたら生き恥をさらすことなく腹を切っていたことでしょう。


 『咖喱夜話』で出鱈目を書き連ねることの快感を知った私はその後主にカレーを題材とした小説などを書くようになりました。


 『咖喱夜話』は私の原点なのです。


 カレーで出鱈目を書く楽しさを知るきっかけを与えてくれた研究室の助教とT君には感謝しても感謝しきれません。


 ちなみに『咖喱夜話』をベースに小説化したものを現在カクヨム上で公開していますのでよかったらそちらも読んでいただければ幸いです。


小説版『咖喱夜話』

https://kakuyomu.jp/works/16816452220330153756


 


 

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