おしもおされも

あきのななぐさ

わたしの推し活

 今更ながら振り返ってみると、私の人生は推し活人生だったのかもしれない。


 一番古い推しは、たぶん魔法少女の――。もう名前も忘れちゃったけど、たぶんその当時人気だったアニメ。お小遣いやお年玉をつぎ込んで、いろんなものを買ったと思う。


 でも、それも流行が終わるとそれで終わり。それまで集めていたものは、多分もう無いのでしょう。


 それからは、アニメの世界ではなくアイドルグループ。中学、高校、大学、社会人。それぞれの時代にそれぞれの推しがあったけど、そのどれもが私の宝物として、大切に保管されているでしょう。


 色々なものを買うために、色々なところに行くために、アルバイトや副業と、ずいぶんつぎ込んでいたと思う。


 母からも、友人からも『それだけあれば、ひと財産あるんじゃない? 』『結婚の動機が不純じゃない?』とあきれた感じで言われたけど、今でも私の気持ちは変わらない。


――何のために仕事をするのか?


 はっきりとその答えを言えない人が多い中で、私は胸を張ってそれを言える。だからこそ、仕事も家事も子育ても、一生懸命前向きにできたと自負している。


 でも、それももう終わり。こうして自分の体を自分で動かすことができずにいる今は――。


 ああ、できるなら、私の推し活の集大成の中に埋もれたかった……。


「私の推しの人生も、気持ちだけになってしまったわ……。その気持ちすら、だんだんと薄れていくのだから……。――私って、何なのかしら……」


 弱気な気分が後押しし、そんな言葉がこぼれだす。


「まあ、そんなお前を見ていて、儂は元気をもらえたよ。――だから、お前は『儂の推し』じゃったんだろうな」


「――なら、ちゃんと最後までみておいて」


 しわくちゃで、お世辞にも美形とは言えないその顔が、無理やり作っている不気味な笑顔を見て思う。


「わかっとる、わかっとるよ……」



〈了〉

 

 




 

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