【18】

美術の時間に 教科書の中に載ってる絵画の中から自分の好きなの1つ選んで模写する授業あって 自分は数ある名画の中からカバネルさんの『ヴィーナス誕生』の絵を選んだ。この絵と、ブーグローさんの『ヴィーナス誕生』は、ボクがパリいた幼稚園や小学生の頃、イレーヌちゃんと、よくオルセー美術館に行って、走って観に行ってた、想い出の絵画だ!この絵は美術の先生も好きな絵なんとちゃうかなあと思った。自分が模写してるところを先生が嬉しそうに見てはったような感じしたから。先生とは同じ美術好きな者どうし 気持ちも通じ合ってる気するので。美術の先生は、美術大好きなボクのことを、好きに思ってくれてるように、めっちゃ感じてる。

それから何日かして 模写も完成して 完成した絵を丸めて手に持って 自転車に乗って学校から家に帰ったら ちょうどその時、庭で祖父母2人で仲良く庭仕事をしてはった。自分が自転車を納屋に入れて 庭を歩いて玄関に向かってたら 自分の手から 丸めてた絵を黙ってスッと抜き取って それから絵を広げて 2人で顔を見合わせて笑いながら 自分の模写した絵をしばらく眺めてた。そして、そのあと また絵を丸め直して 自分の手に また黙ってスッと 差し込んで 2人仲良く庭仕事に戻って行かはった。絵の感想を何か 例えば きれいな色使いだとか 光と影の使い方がうまいだとか 言ってくれれば 「これはカバネルって画家の絵を模写したやつで...」とかって 自慢気に言おうと思ったのに。でも まあ ええかっ 2人揃って仲良く見てくれたから...誰かに自分の描いた絵を見てもらえるのって 何だか めっちゃ嬉しいことなんやなあて思った。そう思いながら玄関を入って 2Fの自分の部屋へと上がった。それにしても 祖父母2人とも 自分が描いた絵を手に持って 学校から帰ってくること まるでわかってたみたいな態度やったなあーっ。不思議やわあ。なんで知ってたかのように 自分の手からスッとめっちゃ自然に抜き取りはったんやろなあ。そう思いながら自分の勉強部屋に入って、それからもしかしたら自分の絵を見るのを楽しみに待っててくれはってるかもしれない 何者かに向かって はいっ て絵を広げて見せてみた。それから絵を机の上に広げて置いといて 自分は着替えをしていたら 何か 絵がふわっと少しだけ動いたような気した...

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