第37話

それでクルミは大人しくなった。



陥没した頬はすぐに腫れあがってきている。



光平は気を取り直して先ほどと同じようにクルミの目を無理矢理開いた。



そして金属のヘラを眼球の上部分へ差し込む。



するとクルミは光平の下で痙攣するようにビクビクと震える。



光平はその反応を楽しみながらクルミの眼球をえぐりだした。



途端におびただしいほどの血があふれ出し、クルミの顔を真っ赤に染めていく。



光平は血のぬくもりを感じながらもう片方の眼球を同じようにして抉り出した。



これでクルミはなにも見えなくなった。



これから足の腱を切り、そして拘束を解くのだ。



その時クルミがどんな風に逃げようとするのかが見ものだった。



あぁ、その前に声帯もつぶしておかないといけない。



出ない声を必死で振り絞り、見えない目で逃げ道を探し、立てない足で走って逃げようとする。



考えただけでも全身がゾクゾクと震え上がった。



この仮面を手にしたクラスメートたちはみんなくだらない犯罪者になった。



だけど俺は違う。



最大限にこの仮面の力を利用することができているんだ。



自分に酔い、恍惚とした表情になったそのときだった。



突然薄闇の中にカシャカシャカシャといシャッター音が響き渡ったのだ。



光平はハッと息を飲んで振り返る。



工事現場の壁の奥へ逃げていく人影が見えて立ち上がった。



一瞬クルミを見下ろしたが、クルミは出血のショックのせいか完全に気絶してしまっているようだ。



本当は生きている間にもっと拷問したいが、今は緊急事態だ。



このままクルミが死んでしまっても仕方ない。



光平はクルミをそこに残して、人影を追いかけたのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る