第6話 乙女の退院
午後の日和の中、病室のベッドで少し眠ってしまった竜也は、ふと……目を覚ますと可愛らしい寝顔の美穂の顔が間近にある事に気付く、彼は何気無く……まだあどけない少女の寝顔を見つめた。
美穂も愛しい人に見つめられている事に気付いたのか、ふと……目を覚まし「ふふ……」と、嬉しそうに微笑んだ。
その直後だった、竜也はズキッと頭痛の様な感じがした、それと同時に彼は少女に抱き着いた。
「え、竜也さん……!」
彼は美穂の真上に跨る、幸い……病室は、彼だけの1人部屋だった為、多少騒いでも周囲には聞こえず。看護師も来る時間で無かった為、周囲には気付かれる心配も無かった。
それを見越してかは不明だったが……突然、人格が変わったかの様な竜也が、美穂に激しく抱き着いた。
「あ……」
ギシギシ……と、ベッドが激しく音を立てる。
しばらくして……竜也は、ふと目が覚めた様に意識が戻った。自分の隣を見ると、患者用の衣服を着込む美穂の姿があり、ゴミ箱には丸めたティッシュがあった。
「あ、美穂……」
竜也が何か言おうとした直後、彼女が激しくキスを迫って来た。竜也は少女に押し倒されてしまう。
「貴方が大好き、こんなに激しくされたら、もう……貴方しか愛せないわ。お願い、私と結婚して……」
彼女が何を言っているのか竜也には理解出来なかった。頭痛の後の記憶が無かった為、自分が何をしてしまったのか解らなかった。ただ……美穂の表情を見る限り、自分が何かをしたのは間違い無かったのは明らかだと感じた。
「ねえ……退院したら一緒になりましょう」
「そ……そうだね」
病院内で下手な事言うよりも、退院した後に詳しく話そうと竜也は思った。
彼女は竜也に惚れた様な感じで病室を出て行く、その彼女を見送りながら、竜也は自分が何かとんでもない事をしてしまった罪悪感に悩まされる。
(このまま本当に退院しても良いのだろうか?)
悩んでいても仕方ないと竜也は思った。診察で言われた脳科学の先生に会って話をしよう……と、彼は考えた。
〜翌日……
竜也は何時もの様に待合室で読書をしていた。
「竜也さん」
自分を呼ぶ声が聞こえて、顔を見上げるとセーラー服に身を包みポニーテールの可愛らしい少女の姿があった。隣には年配の女性の姿もあった。
「あ……はじめまして」
その言葉に少女は少しキョトンとして
「私よ、川谷美穂よ」
それを聞いて竜也は少し驚いた。
「あ……ゴメン、気付かなかった」
その言葉に美穂は少し腕を組んで「フン」とスネた。
「制服姿初めて見たし……。その、可愛いかったから……」
戸惑いながら言うと美穂は嬉しそうに
「本当?」
頰を赤く染めて答える。
「なんで制服を着てるの?」
「これから学校に行くのよ、午後の授業だけでも受ける予定なのよ」
「へエ……そうか、頑張ってね」
「ありがとう……」
美穂は嬉しそうに答える。
「美穂、彼がアナタの話した……」
「竜也さんです」
そう言うと母親が竜也に近付き。
「はじめまして、美穂の母親です」
と、頭を下げる。
「あ……はじめまして村石竜也と言います」
母親は竜也を見て「ふうん……」と、頷く。
「アナタ……相当モテるわね。恋人の数も10〜20人近く居そうね」
少し驚いた。流石に現在、そんなに恋人はいないが…それ以上に美穂の母親の人を見抜く目に竜也は驚く。
「分かるのですか?」
「ええ……何となくね、昔……人相占いをしていたからね。娘がアナタに夢中になるから……どんな人物か知りたかったの。まあ……私も、せめて30歳位若ければ、アナタの相手しても構わないと思えてしまうわ…」
「そうですか……でも、何故突然……こんな風にモテはじめたのか不思議です」
「私が見る限り、貴方には元々人を惹きつけてしまう魅力が昔からあったように見えるわ。今回、貴方が事故に遭って、それが急に大きくなった様に見えるわね」
「そうだったんですか」
「美穂も、貴方の魅力に取り憑かれちゃって、もう……口を開けば貴方の話題よ。昨日も相当頑張ったようね」
それを聞いて竜也はドキッとして、美穂を見た。彼女は微笑んで母親を見る。
「あの子も、アナタとしたなら……子供を宿す覚悟が無いと、アナタの関係は難しそうなのに……」
「これから毎日会いに行くから大丈夫よ」
美穂が母親との会話に入って来た。
「美穂……アナタが思っている程、彼との関係は甘くは無いわよ」
「邪魔する奴が居たら追い払えば良いだけの事よ、まあ……ナースにも竜也さんに色目で見ているのが数人居るようね、竜也さんは知らないけど看護師達の間でも貴方の事は話題よ」
竜也は驚いた。直美以外にも自分に夢中になっている看護師達がいた事に……。それ以上に美穂がそれに気付いていた事もある意味驚いた。
「ところで、母親に僕とした事を話して平気なの?そもそも……僕は昨日、君にイケナイ事をしたんだよ」
「フフ……貴方は、まだ自分に備わった物の凄さには気付いてないらしいわね」
「え……?」
「本来なら美穂との行為も、それ以外の少女とする行為も全て違法で、見つかれば刑務所だけど……貴方はそんな事さえ相手が許してしまう神秘的な物が備わっているのよ」
「え……それって、どう言う事なんですか?」
「私も具体的には説明出来ないわ、まあ……貴方自身気になるのなら、その辺にいる少女を捕まえて試して見たら分かるわよ……」
「ちょっとママ!」
美穂が慌てて言う。
「彼自身の為に1人位許してやりなさい」
美穂は口を尖らせて頷く。
「でも……やはり世間的に見ても、自分の行為はどうかな……と思う」
「どうしてそんな事を言うの⁉︎私は、昨日の竜也の行為は最高に嬉しかったのよ。とても凄くて…男の人に抱かれる事が初めて幸せと思えたのよ。心配なら私が貴方にイケナイ事されたとか誰にも言わないから」
美穂の言葉に竜也は驚き、自分の思っている事が余計な心配だと感じた。
「ただ……気を付けなさい、貴方が持つ神秘的な魅力は人を惹きつけるあまりに、周囲の人を不幸にさしかねない物があるのよ。それは覚えていて」
「分かりました」
竜也に備わった魅力は不明な箇所が残るものの……大体の要素は分かった。
一連の話題が終わると、美穂と母親が話しをする。
「ところで……昨日の彼との行為は実際どうだったの?」
「とても凄かったわ!」
「そうなの……」
なんとなく美穂の性格が母親譲りだと竜也は気付く。
「どうせなら、学校に行く前にどう?」
「あ……今は、遠慮するよ。それに制服汚しちゃダメでしょ?」
「冗談よ……」
美穂が笑いながら言う。
「そろそろ学校に行きましょうか?」
「はあい」
美穂は返事をすると、竜也に向かって「またね」と、手を振る。竜也は手を振って美穂を見送った。
彼女を見送った竜也は少し罪悪感に悩まされた。
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