美味しいカツ

!~よたみてい書

この食べ物は美味しいです。

 白髪の女性が黒い液体が詰まったペットボトルを掲げる。


「はい、今回は、こちらの甘い炭酸飲料、コイチラを使って調理していきたいと思います」


 白髪の女性は十八歳ほどの見た目で、身長は約百六十センチメートル。前髪は眉まで垂れていて、後ろ髪はうなじで切り揃えられている。それから、右側頭部に大きな髪の尻尾をぶら下げていた。目尻は少し吊り上がっていて、目の中に黄色い瞳を宿している。薄い生地で出来た黒い衣装で全身を包んでいて、その上に白いエプロンで体の前面を守っていた。


 白髪女性はペットボトルのキャップを回していく。すると、小さな空気が抜ける音が出た。


 台の上に乗っている銀皿にペットボトルを傾けて、コイチラを注いでいく。コイチラが小さな滝となって、銀皿の中に入っていた肉を水浸しにしていった。そして、銀皿の中に黒い池が出来上がり、肉は水没してしまう。


「コイチラにお肉をひたしたら、三十分放置しまーす」


 【三十分待機】と書かれた長方形の紙を両手で抱えながらその場に佇む。




 白髪女性は紙を床に置きながら笑みを浮かべる。


「はい、三十分経ちましたー!」


 黄色に薄く染まっている油が詰まった容器を取り出す。そして、コンロの上に置かれたフライパンの上に容器を傾ける。


「底から一センチくらいまで入れますー」


 紙袋を取り出し、銀皿の中に白い粉をいていく。


「それからパン粉も用意します」


 別の紙袋を取り出し、同じく細かい白い粉を銀皿にいていった。


「薄力粉も用意しましょうー」


 ボウルと卵を一個取り出し、台所に置く。それから、卵をボウルの端に軽く殴打する。そして、両手で卵の殻を開け、中身をボウルの中に落としていく。


 長めの箸を二本取り出したら先端をボウルの中に突っ込ませ、卵をかき混ぜていった。


「そしたら、コイチラに浸してたお肉を、薄力粉で化粧させていきます」


 黒い池に水没していた肉を掴み、白い大地に押し込んでいく。


「できれば、押すように」


 肉の両面を白く化粧したら、黄色い池に浸していった。


「お次は、卵で水遊びでーす」

 

 黄色いぬめりをまとった肉を、今度はふわふわした白い大地に乗せていく。


「それから、パン粉を装備させまーす」


 武装し終えた肉を、フライパンの薄黄色の池に浸す。


「二、三分したら、もう片面も揚げていきましょうー」


 しばらくした後、白髪女性は肉をひっくり返していった。




 白髪女性は箸をフライパンに近づけていった。それから、濃い茶色に変身した肉を挟み込み、白い皿に移していく。


「カツの完成でーす」


 違う箸を手に持ち、カツを挟んだら持ち上げる。そして、息を数回カツに吹きかけたら、かぶりつく。


「……とってもジューシー! 肉汁が噛んだ後にしっかりと口の中に流れ込んできて、しかも全然重くない! サクサクの衣の食感も美味しさに繋がってて、最高ですよ!」


 笑みを浮かべながら口を動かし続ける。


「わたしは、この作り方を推します! これが推しカツです!」


 カツの表面からは、うっすらと湯気が上昇していた。

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