3 上司ヅラはゴメンです。

ここは、お台場の片隅にある小さな焼き鳥屋の屋台。

現在時間、18時30分。


ステージが終わり、ヨレヨレのトレンチコートを着た魔法少女ラブリーミラーの姿は、その赤提灯の下にあった。

「おやじさん、おかわり!」


「あいよ、姉ちゃん、いい飲みっぷりだね。おいちゃん、感動もんだよ」

カタンッ、ラブリーの手元に置かれるナミナミと注がれたコップ。

それをガッと取ると、ラブリーはガバッと一気飲みだ。


「ぷはーっ、最高!」

「はは、ありがとよ。しかし、あれだ?その[子供びーる]でそこまで飲むなんて、なんか訳有りかい?」


おやじの言葉に何故か、目が据わってきているラブリー。

ギロッと、おやじを睨む。

「ちょっと、おやじさん!聞いてくれる?私、可哀想なのよ!」


「あいよ。鳥つくね、焼けたよ」

「ああ、あたしの好物ーっ!」

さすが、おやじさん。

絡まれる絶妙なタイミングで、焼き鳥を出した。


「って、おやじさん!私の話、ちゃんと聞いてる?もぐっもぐっもぐっ」

「聞いてる、聞いてる。嫌な上司のパワハラに、頭きてんだっけ?」


とくとくとく、すでに空になったコップに、再びナミナミと注がれる[子供びーる]。

ラブリーは泡のヒゲを付けながら、鳥つくね1本を完食すると再びおやじさんを睨む。


「私、アイドルで世界を救った魔法少女なのに、ステージ下ろされた挙げ句、着ぐるみ達の付き人兼司会役させられたのよ!」


「聞いてるよ。あいよ、鳥つくね。サービスで、ただでいいぜ」

「きゃーっ。有難う、おやじさん。私の好物!」

さすが、おやじさん。

再び、絶妙なタイミングである。


「それでね、もぐっ、おいひ~っ、元々私の宿敵の親玉だった❪着てるよ、裸じゃないよ、王様だよ❫マンが、上司ヅラして色々指示してくる訳、何様だと思ってんのよ!」


「あいよ。焼きたて、塩鳥つくね」

「きゃーっ、塩は美味しーよねーっ!」

さすが、おやじさん。

再再、絶妙なタイミングである。


▩▩▩


19時30分

「ほら、嬢ちゃん。こんなとこで寝てたら、風邪ひくぜ。起きな」

「あ、あれ?私、なんで寝てたのかな?」

何故か、[子供びーる]で眠りこけたラブリーミラー。

意味不明である。


「疲れが出たんだろ?今日はもう、帰りな。嬢ちゃん、未成年だろ?」

「あ、うん。有難う、おやじさん」


おやじさんに引き立たされ、礼を言うラブリー。


「そうだ、嬢ちゃん。[子供びーる]に当たりが出たから、次回は[子供びーる]、ただで出すぜ」

「本当ーっ?!来る、来る、また、寄るねーっ!」


手を振りながら、離れていくラブリー。

遠ざかるラブリーを優しく見つめる、おやじさん。

ラブリーが完全に見えなくなると、おやじさんは屋台の奥に入っていった。


スタッ、スタッ


そして、間も無く屋台奥から一つの影が現れる。

「モンガーっモンガ、モンガーっ」


その影は、怪人❪モモンガだよ、こんにちわ❫

だったそうな。




謎が謎を呼ぶ、壮大なスペクタクルロマン。

果たして、ラブリーミラーの運命はいかに?



つづく?

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