★Step35 リンダの夢は…

復縁…


その噂も、学校中に伝わるのに時間は掛かりませんでした。それを何より喜んだのはリンダでした。これで又、三人で仲良く出来ると、そう思ったからです。


あの日を境に、南は『別に』と言う言葉を言わなくなりました。人を傷つける事が、どれほど罪深い事か、少しだけ分った様な気がしたからです。そして夏子を思いやる気持ちは、全ての人を思う事に通じている事に気がつく事が出来ました。


♪♪♪


季節は流れ、三か月はあっという間に過ぎ去りました。リンダの地球での生活も残り一週間となりました。


「だから、何回言ったらわかるんだ」


南は丸めた教科書で、リンダの頭をぽんぽんと叩きます。リンダは相変わらず学校の授業にはついて行けてはいません。でも、南は、それにイラつく事も無くなりました。


人はそれぞれ得意な事が有る。リンダは、動物と仲良くする事が出来ると言う特技が有りますから、彼女がこれからしなければいけないのは、学校の紋切り刀の勉強では無く自然について学ぶ事です。それを南は教える事が出来ません。


「だって、わかんないんだもん…」


ちょっと頬を膨らませて南に抗議するリンダを南は笑って見詰めます。


「まぁ、人間得手不得手は有るもんだ、良い意味で気にするな。勉強だけが人生じゃ無い。いや、それ以外の事の方が重要かもしれないしな」


少し角が取れた南の笑顔をリンダも見上げます。


「ねぇ、南…」

「ん?」

「南はもう一度、うちの牧場に来る気は無い?社会科体験学習、未だ全部終わって無いんでしょ?」


南はちょっと困った表情でこう答えました。


「――ん、ま、まぁ…確かに途中で投げ出しちまったからな」


南の言葉にリンダは身を乗り出します。


「おいでよ南、あれで結構見て回れる処、有るのよ」


リンダの瞳が煌めきます。彼女は自分の故郷の星に、絶対の自信を持っています。地球は都会で一生かけても全部を廻る事は出来ません。でも、自分の星だって良い処は有ります。それに、リンダの夢見た地球は、自分の想像と少し違ってもいましたから。


「お前、自分の星に帰ったら、将来はどうする気だ?」


南はリンダにそう尋ねました。そしてリンダは胸を張ってこう答えました。


「宇宙一の酪農家!」


南はそれを聞いて優しく微笑みました。リンダも、それに応えます。少し、大人になった二人の姿が、そこには有りました。

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