★Step27 わかれのことば

次の日、夏子は学校に現れませんでした。南は自分の席に着き机に頬杖をつきながら夏子の机に視線を送り、はあっと大きな溜息をつきました。


「すまん、南、俺が悪かった」


その様子を見ていた佐藤が南の席の横に来て小さな声でにそう謝りました。


「いや、気にしてないから…」


南は相変わらずぶっきらぼうにそう答えました。


『わかれようか…』


南は夏子の昨日の言葉を思い出して居ました。夏子はぽろぽろと涙を零しながら南にそう言って、自分の家に帰ったのです。そして、彼女を引き止めなかった自分の事に犬をカンを感じていました。


確かに、夏子に南は優しく有りませんでした。でも、南は彼女がそれ程思いつめているとは思わなかったのです。自分の態度は、自分の性格だから直しようが無い、その事を夏子はきっと許してくれる筈だと言う都合のよい思いが有って


それに甘えていた事は確かです。


「なぁ、南、昨日…夏子さん、何か何時手無かったか?」


佐藤は眉間にしわを寄せ何時もと違う厳しい表情で南にそう尋ねました。


「――ああ、言ってたよ」


「それで、どうするんだ…」


南は少し考えてから佐藤を見上げて


「別に…」


そう答えました。それを聞いた佐藤の表情が少し変わりましたが、彼は何も言わず、自分の席に戻って行きました。


「ねぇ、夏子さん…何か言ってたの?」


今度はリンダが南にそう尋ねました。


「なんでもない、気にするな」


南はリンダにも無愛想です。今日は無愛想度合い4割増し位の態度ですが、リンダは段々その態度に慣れて来ている様で、あまり気に成りませんでした。それより、問題は夏子です。南は彼女に何を言ったのか気に成って仕方ありませんでした。地球に来て初めての女友達だと思っていたリンダです。力に成れるのなら、なってあげたい、そう言う思いが有りました。


「まさかと思うけど、何か酷い事言ったんじゃないでしょうね」


南は横に立って、自分を見下ろすリンダに視線だけくれてやると、それっきり何も言いませんでした。


「言ったわね…」


今度はリンダが眉間に皺を寄せます。


「何、言ったの?」


リンダの目が座っています。その視線は南を追い詰めていました。


「何も言わなかったんだ…」


南はリンダに視線を合わせる事無く、そう答えました。


「――何も…言わなかったって?」

「お前には関係ない。これは、俺と夏子の問題だ。口を出すな」


南はそう言ったきり何も言いませんでした。でもリンダは納得出来ません。南は絶対に夏子に何かしたと感じていました。そうでなければ、聡明で明るい夏子が学校を休む等は有り得ないと思ったからです。リンダは決心しました。おせっかいかも知れませんが、夏子に直接聞いて見ようと。

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