【KAC2022】 幼馴染みは二刀流×2!

東苑

これも二刀流!



 学校のグラウンドにて。

 今日の体育はソフトボール!


 わたしは友達のあやちゃんと外野でボール拾い係。

 クラスのみんなは出席番号順に打席に入って先生の投げたボールを打ってる。


 でもプロ野球選手みたいにはいかなくて、ボールはほとんどコロコロ転がってる。


 そんなときカキィーンと金属バットの快音が響いた。

 打ち返されたボールはあっという間に防球ネットに突き刺さる。


「オーライ! オーライ!」


「え、え!? ボール来た!? どこ!? 見えない!? 消える魔球!?」


「ううん、こっちには来てないよ。向こう。えっと左の方だから……レフト!」


「あ、ほんとだ。ネットまで届いたんだ、すごいな~……あれ? でもうららちゃん今「オーライ」って言わなかった?」


「なんかオーライって言ったら捕れそうな気がして!」


「う~ん、言葉だけじゃさすがに無理なんじゃないかな」


「そっか~。でもね、もしこっちにボール来たらそのときはわたしに任せて、あやちゃん! きっと捕ってみせるから! 弟とキャッチボールしたことあるから腕には自信があるんだ」


 ふふんと胸を張ってみる。


「うん、ありがとー、うららちゃん」


 あやちゃんに頭をなでなでされる。

 こっちのほうがなでやすいかと思って頭を少し下げてみた。


「それにしてもすごい音だったね~、育美いくみちゃんの。今のホームランなんだよね?」


「多分そう! 育美、中学のときはソフトボール部だったんだよ。すっごい上手だったんだ!」


「全然知らなかった~。育美ちゃん、教室にいるときは静かな子だから。運動部だったんだね」


 育美はクラスのみんなにキャーキャー言われながらベースを回ってる。

 ホームランを打ったのにいつも通り凛としてて、今日もかっこいい。


「そう言えばさっきの投げるテストのときも、育美ちゃんのボール、先生も打てなかったし。打つのも投げるのも上手なんてまさに二刀流だね~」


「二刀流!? なんかカッコいい!」

 

 間もなく、私とあやちゃんのところに育美が小走りでやってきた。

 あのホームラン一本で打つテストは終わったらしい。


「お疲れ~、育美!」


「育美ちゃん、ホームランおめでと~!」


「ん、ありがと…………まずった、目立ちすぎた」


 なにか不満があるのか、少しむっとしてる育美。

 もしかして褒められ足りなかったのかな。

 ならばここは幼稚園からの付き合いであるこのわたしが!


「今日もかっこよかったよ、育美! みんなにもキャーキャー言われてさ、ヒューヒュー!」


「…………で」


「「え?」」


「カッコいいって言わないで~!」


 育美がグローブで顔を全部隠す。


「「(耳すごい真っ赤になってる!?)」」


「ごめん育美~! 許して~! 怒らせるつもりじゃなかったんだよ~」


「お願い、グローブの中から出てきて育美ちゃん!」


「…………うん」


 少しだけグローブを下げておでこと目だけ見せてくれる育美。

 さっきホームランを打った後に堂々とベースを回ってたときとは別人だ。

 あ、てかキャーキャー言われたからわたしたちのところまで走って逃げてきたんだ。


「か、かわいい……」とぽつりともらすあやちゃん。


「あ、こっちも二刀流だね!」


「なんの話?」


 育美は首を傾げるのだった。 

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【KAC2022】 幼馴染みは二刀流×2! 東苑 @KAWAGOEYOKOCHOU

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