学生トーク「二刀流編」

山田 武

学生トーク「二刀流編」



「──なあ、二刀流って何だと思う?」


「……いや、急に何だよ」


「ほらさ、最近有名な野球選手に二刀流で人気になった奴がいるじゃん? それ見てふと思ったんだよ……ゲームでも二刀流があるけど、それとは全然違うわけだし」


 学生二人は休み時間、ふと思ったことを話し合っていた。

 片方の少年は休み時間のみ使用が許されているスマホを使い、野球選手の画像を出す。


 それはごくありふれた会話……転校生が来るでもなく、異能に目覚める学園でも無く、ただただ将来について希薄なイメージを持つ子供たちが語り合う。


「オータニさんか。まあ、二刀流っていつもニュースでやってるよな。けど知ってたか、野球の二刀流って別にホームランを連発するバッターで、完封できるピッチャーってわけじゃないんだぞ」


「…………え゛っ、違うの?」


 画像を出していた少年は、オータニがまさに投げている瞬間だった画像を二度見するほど驚いた。


 それが分かっているからだろう、もう片方の少年は哀れむような表情を浮かべ、説明を始める。


「二刀流の選手ってのは、本来投手も野手もできるヤツのことを言うんだぞ。ピッチャーとそれ以外のポジションで、投げ方が違うからだ。その投げ方の違いを、剣の二刀流に合わせて二刀流って呼ぶことになってるんだ」


「へぇー……マジで?」


「いや、今作った」


「…………いや嘘かよ!? お前、今本当だと思ったじゃねぇかよ!」


 机をバンッと叩き、苦言を申し立てる。

 かなり本気にしていたからだ、こっそりスマホで調べて、似た情報が載っていたからこその怒りっぷりなのだろう。


「まあ、アレだ。何でもかんでも極端になりそうなものを二つ同時にやってりゃあ、二刀流ってことでいいんだよ。攻撃と防御で二刀流、酒と甘い物で二刀流、攻めと受けで二刀流。なっ、何でもいいだろう?」


「……なあ、一つ目と三つ目同じじゃね?」


「…………そうだな、そう思えるのは幸せだろうよ」


 常日頃から話し合う二人、だがどうやら知識量には差があるようだった。


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