俺、悪人ッス

杜甫口(トホコウ)

もうちょっと悪な世界

今の世の中、増々悪人が生き難くなってる気がする。

特に弱い悪人。

いわゆる『ホワイト社会』って呼ばれてるのがそうなんだけど、世の中にはどうしても善人になれない生まれつきの悪人気質な奴が居て、かくいう俺もその一人なんだが正直苦しんでる。


だからいつか俺みたいなやつがもっと気軽に「俺悪人ッス。だから悪人だって前提で接して欲しいッス」って言えるような空気感が世の中にもっとできるといい。そうしたらもっと俺も余裕持てて助かる。


もっとも、そういう空気が世間的に全く無い、ってわけじゃない。むしろ段々悪を許容してくれる社会になってきてると思う。それは多様性を尊ぶ文化が根付いてきてるおかげだ。正直助かってる。

それでも現状では俺のような小悪党は表だっては動けない。何故なら俺は自己肯定感がとても低く、自分の事をザコだと思い込んでるからだ。

かといって自分の気質以外の事を無理やりやると、それだけで大変なストレスが掛かるし、そもそも自分の不得意分野(善行)では勝てない。俺はとことん勝ちにこだわるタイプの人間なので、勝てないと悔しい。悔しいからどんな手段を使ってでも、ってなる。そうなると自然と犯罪が選択肢に入ってくる。


(ちなみに俺が恐れているのは『人類は全て本当は善人なんだ』って理想を持ってる人。その中でもその理想を押し付けてくる連中が最も怖い。ここはホントマジ許ししてってなる)


で、幾ら俺が悪人って言ってもバカじゃないので、世間が俺を受け入れてくれるって安心感さえあればそんなにあくどいことはしない。

俺は基本的に俗物なので、目先の利益から周りの利益まで考えて現実的に行動する。

そういう行動には、結果的に世間で善行って呼ばれるような行為も勿論入るだろう。なぜなら世の中の刑法などにより、善行を行った方が得するように社会の仕組みを作っているからだ。ならば悪人である俺も、それほど悪い事をしないで済む。悪い事も少しはしたいけれど。


何はともあれ俺は悪人なので、自分にとって住みよい、もうちょっと悪な世界になればいいと思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺、悪人ッス 杜甫口(トホコウ) @aya47

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ