第22話 とある県で

これは両親、というより親父から聞いた話。とある県でマンションを探していた時のこと。とても丁寧な不動産屋さんでいろんな物件を案内してもらったらしい。


とあるマンションのエレベーターに乗った時、母が


「そういえば最近物騒になりましたよね。ここの近くでしたっけ?殺人事件があったの」


と世間話をする感じで不動産屋さんの方に話しかけたの事。そうするとその方はボタンの方を向いていたので表情は窺い知れなかったが、少しだけ顔を下に向けた。そして震えた声で


「ぶっ、物騒ですよね~……」


と歯切れが悪い。不審に思った親父が


「後でそこに行ってみるか」


と言うと、不動産屋が一言。


「……ここなんですよね……殺人現場……」


両親は少し固まった後、想像できないくらい激怒。特に家に拘りがあった母は大大大激怒!今なら親父がブチギレまくるであろうが、母はそれを上回る。宥めるのに2、3時間かかったそうな。まぁ、当たり前ですよね。当時の価値観(現在かもしれませんが)で家(たとえマンションだとしても)は大きなお買い物。それ以来、我が家では不動産屋=詐欺師が定着してしまった。全員が全員そうではないのはわかっているんですけどね。両親は違うみたいです笑

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