5話 日常系中年女性モブキャラ系豚骨ラーメン

「俺じゃダメなのか?」

今、幼馴染の男の子からの告白に戸惑うヒロインのシーンがカフェの中で繰り広げられる。後、数秒すれば本命の彼がやってきて修羅場シーンが展開されるはず。

だけど、私はそこにたまたま居合わせた中年女性系モブ。

ゲーム画面だと大体ボヤけている。

後、出没するのは街中での動かない背景。

そうやって日常系恋愛ゲームを人知れず盛り上げるのが私の役目。


今だって特に何をするわけでもなく紅茶を飲んでいるだけ。もう、何度目か分からないショートケーキを口に運びながらさすがに飽きると漏らしたい。

でも、今は大事なシーン。

私の愚痴なんて誰も聞いてくれない。

だけど、心の中なら別にいいよね。

私はどっちかっていうとオシャレスイーツよりガッツリ系が好きなの。

から揚げとか、ステーキとかね。

でも、この二つはこの前食べたばかりだしな…。

そうだ。今日はラーメンにしよう。

後ろの席で若い二人が青春を謳歌する中、頭はもうラーメン一色。

味は何がいいかな。やっぱり醤油?

塩もいいな…でも味噌も捨てがたい。

それとも変わり種のゆず風味も興味あり?

すっごく迷うわ。


ああ、早くこのシーン終わってくれないかな。


足取り軽く待機ルームに入った私が最初にやるのは雪山モードに変えること。


これで熱々ラーメン最高じゃない?


ニヤニヤが止まらない。

今日は豚骨ラーメンにしよう。


中年女性モブが食べるから、日常系中年女性モブキャラ系豚骨ラーメンかな。

一人、大笑いするも誰の返答もない。

むしろ誰もいなくてよかったかも。

私、ちょっとおっさん臭い所あるのよね。

モブ設定ミスでもされたのかしら?

まあ、どうでもいいわ。

アツアツのラーメンをフーフーと息をかけながらまずはスープから。

濃厚な豚骨スープが麺に合わさって舌に絡まる。

麺をズルズルと口の中に滑り込ませれば、熱さとモチッっと触感が頬を緩ませる。


いつまでも麺が進むわ。


後はメンマのコリコリ感もやめられない。

大量チャーシューもトロトロ、チャーハンも一緒に味わえば最強ね。

思わず笑いが生まれるおいしさ。

満腹まで後一口。

これがあるから名もなき役も頑張れるのよね。

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