第2話 

 翌月。


「蓮君、元気でね」


 施設の男性が言った。


「お世話になりました」


 蓮はそう言うと、外で待っているアイビーの元へ向かった。


「おつかれ。行こっか」


 アイビーが言った。


「うん!」


 蓮は来た道を一年ぶりに通り元々いた街に戻ってきた。


「これ」


 アイビーが服を渡す。


「ありがと」

 

「これからどうする?家、帰れそうか?」


「俺もそろそろ現実受け入れないとな。とりあえず今日は帰ってみるよ」


「そっか、分かった。落ち着いたら連絡して」


 そう言うと二人は解散した。蓮は公園のトイレで着替えを済ますと急いで約束の場所に向かう。


 (確かこの辺だよな)


 辺りを見渡すも、あんずの姿はない。


 (いないなぁ、やっぱり俺なんかと会ってくれるわけないよな)


 蓮はがっかりしていた。


 (あれ?)


 その時何かを見つける蓮。そこにはメモが置いてあり、こう書いてある。


 "急用が出来てこれなくなっちゃった。ごめんね。連絡待ってる"


 (あんずさん‥‥)


 番号も書いてあり、蓮は急いでスマホを契約しに行く。蓮はあんずに会いたくて仕方なかった。

 


 プルルルル


「はい」


「あんずさん?蓮だけど」


「蓮君、電話ありがとう。ちょっと複雑な事情があってそこには行けなかったの。今から言う所に来てくれる?」


「分かった」


 蓮はあんずに言われた場所に向かう。



「あんずさん!」


 あんずの姿を見つけ駆け寄る蓮。


「蓮君!」


 あんずは思わず蓮に抱きついた。


「‥‥あんずさん?」


 蓮は頬を染めていた。


「会いたかったよ」


 あんずは顔を上げると涙を浮かべていた。


「あんずさん?どうしちゃったの?」


 動揺する蓮。


「ごめん、嬉しくてつい」


「ビックリした‥‥」

 

「そうだ、蓮君はこれからどうするの?」


「知り合いの所で働かせてもらうつもりだよ」


「そうなんだ、ねぇ、うちこない?」


「あんずさんの家?」


「うん、近くなんだ」


「あんずさんがいいなら」


 二人はあんずの家へと向かう。


「おじゃまします」


「どうぞー」


「すごい可愛い部屋だね」


「ありがとう、お茶入れるね」


「あんずさんはボランティアの他になにかやってるの?」


「大学行ってるくらいかな」


「そうなんだ」


「はい」


 あんずはお茶を置くと蓮の隣に座った。


 (あんずさんいい匂いする)


 蓮はドキドキしていた。


「今日は家帰るよね?」


 あんずが聞いた。


「うん、色々片付けとかもあるから」


「そっか、せっかく蓮君と会えたからもっと一緒にいたかったな」


「あんずさんの時間ある時は会おうよ」


「また来てくれるの?」


 あんずが上目遣いで言った。


「もちろんだよ」


「でも、離れたくないな」


 あんずはそう言うと蓮に寄りかかった。


「きょ、今日のところは帰るね」


「分かった、連絡待ってるからね」


 蓮は急いであんずの部屋を後にした。

 

 (焦ったぁ、あんずさんって意外と大胆なんだな)


 そんな事を考えながら蓮は家に戻る事にした。


 自宅のあるビルまで帰ってきたものの、玄関の前で座り込む蓮。


 プルルルル


「だれ?」


「俺、蓮」


「あぁ、どうした?」


「今帰ってきたんだけど、これる?」


「すぐ行く」


 蓮は一人で入るのが怖くてついアイビーに電話してしまっていた。


「ごめん、呼び出して」


「いいよ、入るか」


「うん」


 そう言って二人は家の中に入る。


「おかえり」


 アイビーが言った。


「うん」


「何気に蓮の家来るの初めてだわ」


「そうだよね、来る事ないもんね」


 アイビーはソファに座る。


「おじさんの荷物片付けないとな」


「ゆっくりでいいじゃん」


「事務所の片付けもあるし」


「事務所の方は柴さんと片付けたから大丈夫だよ」


「ありがとう」


「今日泊まろうか?一人で寝れるか?」


「出来れば泊まってほしい、かな」


「分かった、とりあえず飯行こ」


 アイビーはそう言うといつもの店に蓮と向かう。


「あのさ、ボランティアの子ってどんな子?」


 アイビーは気になっていた。


「なんで?」


「いや、ただ気になって」


「普通の子だよ」


「そっか」


 二人は食事を済ませると蓮の家へと帰った。


「これ使って」


 蓮はソファで寝るアイビーの為に毛布を渡す。


「ありがと」


 アイビーは受け取るとソファで眠りにつく。


 蓮は久しぶりに自分の部屋で眠る。


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